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- 【採択研究紹介】プラズマバイオエンジニアリング研究センター
研究センター部門 令和8年度 研究センター推進事業費 研究代表者:榊田 創(理工学部・教授)
研究内容・今後の展望
プラズマで切り拓く新しいバイオエンジニアリング
本センターでは、プラズマを基盤とした新しいバイオエンジニアリングの創出を目指し、分野横断的な研究を推進しています。これまで培ってきたプラズマ制御技術を核に、基礎から応用、さらに社会実装までを一体的に展開しています。
■ プラズマという基盤技術
本センターでは、「プラズマ」と呼ばれる電離ガスの特性を活かし、医学・農学・薬学など異なる分野を横断する新しい技術の創出に取り組んでいます。プラズマは、固体・液体・気体に続く「第4の状態」とされ、太陽などの恒星、電離層、雷やオーロラといった自然現象にも見られるほか、半導体製造などの先端産業を支える重要な技術としても活用されています。
■ 研究代表者の研究の出発点 ― プラズマ研究から応用へ
核融合プラズマといった高エネルギー分野の研究からスタートし、その後、イオンビームや低温プラズマを用いた材料プロセス、さらに半導体材料向けプラズマシステム開発へと研究領域を発展させてきました。これらの経験を通じて、プラズマを「生成し、制御し、応用する」ための技術を体系的に培ってきました。
例えば、1) 核融合研究では、高温プラズマをエネルギーの高い状態で安定に閉じ込める手法の検討や、プラズマの挙動を理解するための計測手法の開発に取り組んでいました。2) イオンビームの開発では、30 kV級の高エネルギーから100 V程度の低エネルギー領域まで、高電流密度ビームを安定かつ効率的に引き出すための技術開発を進めてきました。3) 低温プラズマを用いた材料プロセス研究では、a) 低融点材料に対する大気圧環境下での表面機能化プロセスの開発、b) 高品質な窒化インジウムや高インジウム含有窒化ガリウム半導体膜の新規成膜プロセスの確立などを通じて、低温かつ反応性に富むプラズマ環境を精密に制御する技術を培ってきました。
これらの研究を通じて得られた知見は、プラズマのエネルギー・反応性・空間分布を精密に制御する技術として体系化されており、非平衡状態における選択的な反応場設計という共通原理に基づいています。
現在は、こうした基盤技術をもとに、低侵襲止血技術の開発を進めています。臨床現場の課題解決のために、理工学の技術シーズと医学・生物学の分析手法を統合し、従来の熱による止血とは異なる「新しい原理」にもとづく低侵襲止血デバイスの社会実装を目指しています。このため、研究代表者は主にプラズマ制御および装置開発を担い、医学系研究者・臨床医と連携することで、分子病理学的エビデンスに基づく社会実装を推進しています。そして社会実装ではその可否を判断する基準が必要とされることから、低侵襲止血技術の国際標準規格の策定にも関与しています。
■ 研究センターの研究概要 ― 分野横断型の研究拠点
本センターは、従来のプラズマバイオ応用研究センターにおいて蓄積された農学・薬学分野の知見を基盤とし、医療電子機器の開発や応用研究を含む分野横断型の研究拠点として設立されています。プラズマを基盤としたバイオエンジニアリング技術の確立を通じて、異分野融合による新たな学術領域の創出を目指しています。
■ 基礎から応用へ ― メカニズムの解明
応用技術を発展させるためには、その仕組みを理解することが重要です。本センターでは、プラズマ(荷電)と生体物質の相互作用に着目して研究を進めています。また、微生物がどのように不活化されるのか、植物や細胞がどのように反応するのかといった基本的な現象を明らかにすることで、安全で再現性の高い技術の確立を目指しています。
■ 社会実装と今後の展望
本センターでは、技術の有効性に加えて、安全性の評価方法や検証手法の整備にも取り組んでいます。また、国内外の研究機関と連携しながら、実用化に向けた研究を進めています。
今後は、プラズマという共通の技術をもとに、医療分野では体への負担が少ない治療技術、農業分野では生産性の向上、さらに創薬や細胞工学など、さまざまな分野への応用を広げていきます。分野を越えた連携を通じて新しい価値を生み出し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。






