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【採択研究紹介】多様性憲章研究センター

公開日時:2026.05.01
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研究センター部門 令和8年度 研究センター推進事業費 研究代表者:近藤 敦(法学部・教授)

研究内容・今後の展望

 本研究は、日本において誰もが差別されない「公正な職場環境」を実現するため、多様性の理念を踏まえた「日本版多様性憲章」の内容と実施方法を検討し、自治体・企業・大学への普及方策を提示することを目的としています。多様性憲章とは、単なるスローガンではなく、企業や団体が自主的に署名し、機会の平等と多様性を促進する取組みを行うことを誓約する文書です。まず、各国における多様性憲章および類似の制度の理念と運用実態を比較し、その利点と課題を明らかにします。次に、国内企業へのアンケート調査を通じて、人権尊重の取組状況、課題、憲章の必要性等を把握します。最終的には、日本版多様性憲章を策定し、名古屋・東京・大阪でのシンポジウム開催や書籍出版を通じて社会実装を図ります。

 研究代表者はこれまで、愛知県、名古屋市、安城市、西尾市、春日井市、小牧市、田原市、可児市、各務原市、豊橋市、豊川市の多文化共生推進プラン、ならびに愛知県・東京都・名古屋市の人権施策推進プランの策定に携わり、国・自治体の施策形成に関与してきました。その中で明らかになった最大の課題は、「職場における差別の解消に向けた有効な取組が不足している」という点です。たとえば、研究代表者が座長を務める在留外国人の基礎調査では、差別を受けた相手として「職場関係者」が最も多く、愛知県の県民意識調査でも、人権侵害の場面として「職場等での不当な扱い」が最多となっています。こうした状況を踏まえ、2024年3月に策定された「あいち人権推進プラン」では、「職場において多様性を認め合うための方策(多様性憲章等)の検討」が明記されました。また、豊川市多文化共生推進プラン策定委員会においても、アンケートで「仕事をしているとき」が差別経験の最多理由であることが指摘されましたが、市として十分な対策を提示できていないのが現状です。

 このような課題に対し、ヨーロッパ諸国で広く導入されている多様性憲章は、企業・団体が自主的に署名し、機会の平等と多様性の促進を誓約する仕組みとして機能しています。フランスで始まった多様性憲章は、当初は文化的・民族的多様性を中心としていましたが、現在では①ジェンダー・性自認、②性的指向、③人種・国籍・民族的出身、④宗教、⑤障害、⑥年齢、⑦社会的出身など、多様な属性に基づく差別を禁止する包括的な内容へと発展しています。その後、ドイツ政府や欧州委員会が積極的に普及を支援し、EU27か国で類似の憲章が策定され、企業・自治体・大学などが署名する動きが広がっています。さらに、欧州企業では多様性憲章を「ビジネスと人権」の取組として位置付ける例も多く、ルクセンブルクの行動計画では、多様性憲章が企業との協働による人権尊重の推進策として明記されています。日本の行動計画の今後の見直しにおいても重要な示唆を与えるものです。

 一方、アメリカでは大統領令によりDEI(多様性・公平性・包括性)プログラムが縮小傾向にありますが、多様性が乏しく少子高齢化が進む日本においては、多様な人材を活かす組織文化の構築が不可欠です。しかし、日本の学術分野では、多様性憲章に関する研究は極めて少なく、研究代表者によるフランス・ドイツの研究を除けば、体系的な研究はほとんど存在していません。

 そこで名城大学「多様性憲章研究センター」では、外国人(移民)・女性・性的少数者・障害者・高齢者の社会参加、ダイバーシティ・マネジメント、ビジネスと人権を専門とする研究者を中心に、3年間の研究を進めます。2026年度は、多様性に関する基本理念および多様性憲章・類似制度の国際比較を行い、各国制度の課題を整理するとともに、愛知県に対してあいち人権推進プランに基づく提言を行います。2027年度は、全国企業アンケートにより日本における人権尊重の取組・課題・憲章の必要性を調査し、初年度の比較研究を深化させます。2028年度には、日本版多様性憲章を策定し、報告書の作成、名古屋・東京・大阪でのシンポジウム開催、書籍出版を行います。そして、愛知県・名古屋市・東京都などの自治体に対して多様性憲章の施策化を提言し、社会実装を目指します。

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