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農作物の病気を光らせて食料問題に寄与したい
西山桂(理工学部・環境創造工学科・教授)
- 公開日時:2022.10.13
- カテゴリ: 蓄光材料 バイオマーカー バイオ光標識 ナノ材料 単子葉類 双子葉類 界面活性剤 発光希土類ナノ粒子
研究情報
期間 |
2016~2023年度 |
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種目 |
基盤研究(C) |
課題/領域番号 |
16K05750 |
課題名 |
農作物の発光標識剤を目指した毒劇物フリーかつ発光波長可変な希土類ナノ粒子の開発 |
期間 |
2022~2025年度 |
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種目 |
基盤研究(C) |
課題/領域番号 |
22K05200 |
課題名 |
毒劇物フリーな蓄光バイオマーカー(粒径20 nm)の開発と農作物罹病部の発光標識 |
取材日 | 2022-04-14 |
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10年前から温めていた「光を当てることにより、農作物の疾病を目で見て分かるようにする」研究が2022年度に新たに採択された、理工学部・環境創造工学科の西山桂教授にお話を聞きました。
2億人分もの食料が失われている?!
科研費でされていた研究と今回採択された研究について教えてください
農作物は、成長過程で病気によってその15%が失われています。これはおよそ2億人分の食料に値します。そのため、病気を早く見つけて根絶したいという思いがありました。
今回採択された科研費でやろうと思っているのが、農作物の病気の部分だけを光らせてそこを除去するということです。従来も病気の部分だけを光らせることはできましたが、その光らせることができる物質はカドミウムやヒ素などの猛毒なんです。それでは病気でない部分も食用とすることができなくなってしまう、だから無害な物質でやろうというのが今回の研究です。今は研究室に人工農場を作って実験しているところです。
この研究の着想自体は10年前から温めておられたということですが
はい、名城大学に着任して、十分な設備だけでなく、作物を育てるのが好きで意欲的な学生が数多く集まってきてくれて大変恵まれました。満を持して始めたという感じですね。
名城大学は研究者の自由な発想に基づく研究が盛んな大学です。私も「化学とは」「エネルギーとは」という既存の学問の枠にとらわれると、この研究の着想は得られなかっただろうと思うので、名城大学でないとなし得なかった研究と言えます。
所属している環境創造工学科では、「エネルギー・資源循環分野」を担当しているのですが、この研究も「光エネルギーを上手く使用する」ことが研究のキーポイントです。光エネルギーと農学分野とがうまく結びつきました。
農作物を研究対象とされたきっかけはありますか
私は農家で生まれ育ちましたので、稲が育つ様子を間近で見ていましたし、作物の病気の話も身近な話題でした。物理化学の基礎研究を長く続けてきたのですが、自分が勉強してきたバックグラウンドと幼少の頃から農村で育ったということが結びついたという形です。
コロナ禍で苦労されたことはありますか
研究自体はそうでもないのですが、やはり農作物は常に世話が必要なので、学生の入構禁止は困りました。またゼミ旅行やゼミ後のランチもできなかったので、絆を深めることにも苦労していますね。
学会もほとんどがオンラインになってしまいましたが、学生にとって大きな刺激になりますし、良い経験にもなるので、対面での開催が待ち遠しいですね。
常に先を見据えて
科研費は常に応募されていますか
はい、研究者になってから欠かさず申請しています。理由としては、まず金銭的な面ですね。研究には経費がいくらあっても足りないので、科研費以外の外部資金にもどんどんチャレンジしています。
ただ、科研費は外部資金の中でも別格だと思っています。というのは、厳密にそれぞれの分野が設定されていて、その分野の審査員による審査を経て採択される、自分の学術的な能力や立ち位置をはっきりと知ることができるんです。審査が明確なので、そのようななかで採択されるととてもうれしいです。
不採択だったときもありましたか
もちろん、あります。不採択のときは、その通知が来たその日から翌年度の申請書を書き始めます。逆に今回のように採択されたときも、研究期間は限定されているので、その数年後の次の科研費の申請について今から考え始めます。そうしないと常に良い状態で科研費に申請できないと考えています。採択のときは3年後のことを、不採択のときは翌年のことを考えているという感じです。
科研費が大変だなと思うことはありますか
申請書をカラーで提出できるようにして欲しいですね。他の外部資金はだいたいカラーで提出できるんですが。色の変化を見るような実験をするので、白黒で表現するのは正直ツラいです。
科研費の応募に興味がある方へ一言
自分の研究を他の研究者、審査員の先生に知ってもらうチャンスだと思います。アピールする良い機会になります。ぜひ申請しましょう!
審査員は必ずしもその分野の専門家ではないので、分かりやすい表現を使うことを心がけています。あとは、申請書を他の人に読んでもらうことが大事ですね。学内アドバイザー制度を利用したのですが、実に的確なアドバイスをいただきました。これが今回の採択に繋がったと思います。また、名城大学は事務方のバックアップ力が高いと感じています。何を聞いてもすぐ答えてくれるし、申請書のチェックにしても指摘が的確で、強い味方です。
社会還元や社会実装についてはどうお考えですか
今でも農作物の病気は「遺伝子検査」、コロナで一躍定着した「PCR検査」をすれば分かります。ただ、この検査には技術と特別な設備が必要になります。この研究では将来の実用性を考えて、特別な機械ではなく簡易的な道具を使って、光をあてると病気の部分が分かるということを重要視しています。ネットショッピングで買えるような道具を使うのであれば、高齢の農家や1人農業などでも活用しやすいと思います。
今は特定の病気にのみ対応している段階ですが、いずれはたくさんの病気に対応するようにしたいですね。先程も言いましたが、現在、病気で失われている農作物は2億人分の食料にあたります。欲を言えば、この研究で世界の食料問題に寄与できればと思っています。
関連リンク
- researchmap
https://researchmap.jp/read0051759 - 科学研究費助成事業データベース(2016-2023)
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05750/ - 科学研究費助成事業データベース(2022-2025)
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22K05200/ - 名城大学 理工学部 環境創造工学科
http://env.meijo-u.ac.jp/faculty/faculty.html