研究成果トピックス-科研費-

身近なもので運動の効果を上げたい

都築孝允(薬学部・薬学科・助教)

公開日時:2022.10.07
カテゴリ: 運動 レドックス制御機構 インスリン抵抗性 フィトケミカル 酸化ストレス 肥満 糖尿病

研究情報

期間

2018~2020年度

種目

若手研究

課題/領域番号

20H04468

課題名

レドックス制御機構を介した肥満・糖尿病に対する効果的な運動の探索

期間

2021~2023年度

種目

若手研究

課題/領域番号

21K17694

課題名

運動が有する肥満・糖尿病の改善効果を増強するフィトケミカルの探索

取材日 2022-05-30

体育大学ご出身で運動の効果を最大限に引き出す物質の探索をされている薬学部・薬学科の都築孝允助教にお話を聞きました。

運動との組み合わせは自分の研究の強み

科研費で今まで行われていた研究とこれからの予定を教えてください

研究のテーマとしては、肥満や糖尿病をいかに減らしていくかということが中心です。私が所属しているのは薬学部なので、通常は薬を使っての改善を目指すことが多いと思いますが、私の研究の場合は運動と食事、要は生活習慣を改善して病気を予防しようというスタンスです。私は体育大学の出身で、生活習慣病に対する運動の影響について、これまでもずっと研究を続けてきました。さらに効率的に生活習慣を改善できないかと考えたときに、運動と食事の組み合わせであれば、誰でも簡単に取り入れることができるので、将来ヒトに応用しやすいだろうと思って、その組み合わせでの研究を進めています。運動の効果については今まで研究してきたので、運動をベースにして運動の効果をさらに増強するような栄養素を発見することができれば、より効果的で効率的な生活習慣の改善プログラムに繋げられるだろうと考えています。

 

今、注目しているのがフィトケミカルという植物由来の機能性成分です。酸化ストレスという言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、人体はストレスや病気、生活習慣などによって、人体を傷つける活性酸素を体内でたくさん作ってしまいます。その活性酸素を消去する抗酸化防御機構の働きを上回ってバランスが崩れてしまっている状態を酸化ストレスと言います。その酸化と還元のバランスを整えるというメカニズムが体内には備わっていて、それをレドックス制御機構と呼んでいます。今はそこに影響がありそうなフィトケミカルを探しているところです。フィトケミカルと一言で言っても、種類が山のようにあって全種類を順に試していくというのは難しいので、ある程度は系統立てをする必要があります。ポリフェノールやカロテノイドなど、いくつかのカテゴリー別にいろいろな成分と運動の組み合わせについて検討しています。既にサプリメントなどに使われているフィトケミカルも多くあるので、そういう意味では安全性や効果などのエビデンスは既に存在するのですが、運動と組み合わせてその効果を検証しているものは少ないです。法律が変わったこともあり、機能性表示食品などがどんどん発売されていますが、運動と組み合わせた影響を見ているという点は、私の研究の強みになると考えています。今は動物実験をしている段階ですが、いずれはヒトに応用したいと考えています。

研究の道に進まれるきっかけはなにでしたか

元々研究者になるつもりはありませんでした。最初はスポーツトレーナーになりたいと考えていたので、当初はアスリートを対象にした研究をしようと思っていました。しかし、大学で運動生理学に出会って、エネルギー代謝、特に糖質・脂質のエネルギー代謝にすごく興味を持ちました。そんなときに、エネルギー代謝に興味があるなら、糖代謝の異常が原因の糖尿病の研究を一緒にやらないかと、当時一緒に共同研究をしていた筑波大の医師に声をかけられたのが最初のきっかけですね。それがあったから今があるのかなと思います。大学は自分が興味あるものをとことん勉強できる場だと思っていたので、そこで本当に興味がある学問に出会えたのは幸せなことですね。

前任の大学では実験動物に運動をさせるという研究をやっていました。生活習慣病は運動することで改善するというのは世間一般に知られているのに、一方で罹患率は全然減っていません。もっと誰にでも取り組みやすくて効果の高い方法があればいいのではないかと考えたことがこの研究のきっかけです。


どうしてそうなるのか、メカニズムを解明したい

科研費に対しての思いを聞かせてください

研究にはなんと言ってもお金がかかるので、科研費は必ず申請しています。採択されないと次の申請までの間、かなり苦しくなるので、今後もなるべく途切れさせないようにしたいと思っています。民間の助成金の研究期間はだいたい1年ですが、科研費の研究期間は3年から5年なので、かなり申請書の作成には労力を使いますね。ただ、当たり前ですが毎回まったく違う研究をするというわけではなく、今やっている研究を派生させてどんどん広げていくイメージなので、今やっていることを次に発展させるとしたらどういうことを今一緒にやっておいたらよいかということは、常に頭の片隅に入れて実験を進めています。それでいいデータが得られたら次はこの内容を中心にして申請書を書こうと多少考えながら進めているという感じです。

 

今は科研費の制度に対してなにか思うというよりは、自分の研究を確実に進めて成果をあげたい、そのためにはどうしたらいいか、ということを常に考えています。科研費に比べて民間からの研究費が思うように獲得できていないので、獲得できるようがんばっています。

社会実装、社会貢献について考えをお聞かせください

既に安全性が認められているもので効果がありそうなものを、実際にヒトに飲んで運動してもらうということが早くできればいいと思います。それは社会実装に直結しますよね。ただ、研究という面から言うと、なぜそうなるのかを明らかにしたい、メカニズムを調べたいという思いが強いです。ヒトで実験すると、本当にその物質の効果なのか、別の要因なのかということがわかりにくく、被験者数によっては大きな個人差が出たり、本来見たかった結果がほかの要素に埋もれてしまったりということがあるので、環境要因をほぼ同一に設定可能という動物実験のメリットが大事になります。実験動物の体内がどうなっているかをいろいろと調べることによってメカニズムが解明できれば、そのメカニズムを動かすことのできる代用が考えやすくなるという利点もあります。

人によって効果のあるものが違いそうですね

人種間でも違いますし、日本人のなかでも違います。遺伝的に違ってくる場合もあると思います。私の研究は、たくさんの人に効果的な唯一のものを探すというよりは、いろんな人に選択肢が増えることを目指しています。その効果のあるものが自分の身近にあって摂取しやすければ一番いいですね。

 

これに効く栄養素はこの食品に含まれていますよと言うと、じゃあそれをたくさん食べたらいいんですかとよく言われるんですが、そういうわけでもありません。たとえば、以前ビールのホップの成分で実験したんですが、実際やせるんですよ。だけど、その成分に効果があるのであって、ビールを大量に飲めばやせます!ということではもちろんないですよね。なので、効果的な物質が見つかっても、それは食事で取れる量なのか、それともサプリメントにしないといけないのか、そこまで考えないと最終的な社会実装は難しくなると思います。また、生で食べるのか調理するのかとなると、栄養学などの範囲にもなってきますね。そういったことを考えるためにはまずはメカニズムの解明が急務だと思っています。


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