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研究成果トピックス-科研費-

ディープラーニングによる画像認識で広がる未来

堀田一弘(理工学部・電気電子工学科・教授)

公開日時:2022.10.06
カテゴリ: 深層学習 画像認識 情報リーク 植物画像 生物画像 ディープラーニング 動画像処理

研究情報

期間

2020~2021年度

種目

新学術領域研究(研究領域提案型)

課題/領域番号

20H05427

課題名

動画像中の周期と変調の検出と要因解析

期間

2021~2023年度

種目

基盤研究(C)

課題/領域番号

21K11971

課題名

情報リークを用いた深層学習の高度化

取材日 2022-04-18

ディープラーニング(深層学習)を用いた画像認識技術を研究されている理工学部・電気電子工学科の堀田一弘教授にお話を聞きました。

ディープラーニングを発展させたい

科研費の研究内容を教えてください

私の専門は画像認識です。具体的には、入力された画像が何であるかを認識したり、顔検出のように画像中の特定の対象を検出したり、セグメンテーションと言って画素単位で識別することも行ってます。また、動画像の識別や動画像中の特定の対象を追跡するなど、画像に関する認識処理全般を扱ってます。

 

2012年からディープラーニングが世界的に流行し、そのおかげで急激に画像認識の精度が上がりました。一般的に言われている「AI」も、使っているのはディープラーニングという技術であり、人間の脳を真似た機械学習の方法です。ディープラーニングが登場したことにより、急激に画像認識の精度が実用化可能なレベルにまで近づいてきました。それをさらに発展させるというのが今やっている研究になります。

 

ディープラーニングは人間の脳を模した機械学習法であり、脳の神経細胞や視覚野の細胞処理などを真似てます。その認識精度をさらに上げるべく日々研究をしてます。たとえば、人間の脳で認識処理がなされる際、通常低次野から高次野にフィードフォワードに処理が進んでいくのですが、フィードバックと言って高次野から低次野に情報がまた戻されることがあります。従来のディープラーニングにはなかったそういった働きを組み込み、ディープラーニングをさらに発展させようとしています。

 

ディープラーニングの研究を始められたきっかけはなんでしょうか

2012年にアメリカのメリーランド大学に在外研究に行ったのですが、ちょうどその時にアメリカでディープラーニングのブームが始まったのです。アメリカにいる時に研究のネタを仕入れ、日本に帰国してから本格的に研究を始めました。


一度読んだだけで伝わる内容に

科研費に対してはどのようなアプローチですか

学生時代からずっと欠かさず研究費の申請をし続けているので、必ず申請するものだという感覚があります。修士までは研究費がなかったため、海外出張も自費でしていました。それゆえ、博士課程以降は科研費を取らないと出張旅費がないという感覚がずっとありますね。

 

申請書類を作成することは確かに手間ですが、すごく時間を使っているという実感はありません。私の研究室には、活発に研究を行っている学生がたくさんいて、多くの研究テーマを取り扱ってます。今取り組んでいるテーマのなかで、これをしたらもっと伸びるかなというものをピックアップして、膨らませながら書いていくという感じです。申請書を書くのは、今後の研究を整理するという意味でもよい機会だと思います。

 

審査員は膨大な数の申請書を読んで、1つ1つにコメントしないといけないので、文字がびっしりと詰まっているとイヤになってしまうと思います。そのため、適宜スペースも空けながら、審査員が一度読んだだけで伝わる内容にすることを心がけています。

 

基盤研究(C)と新学術領域研究の両方に連続して採択されていますよね

新学術領域には通常の科研費と重複して申請ができるということをご存じない方も結構いらっしゃると思います。私も最初は知らず、ほかの研究者に誘われて知りました。それ以来ずっと基盤研究と新学術領域に申請してます。新学術領域のおかげで様々な分野の研究テーマを扱うことができ、これが私の研究室の強みになってます。いきなり別の研究領域への応募は敷居が高いかもしれませんが、科研費という制度をしっかり調べると、新しいアプローチが見えてくるかもしれません。

色々な分野との共同研究

社会実装や社会貢献についてはどうお考えですか

ようやく画像認識の精度が実用化レベルにまで達したので、社会実装や社会貢献できるフェイズに来たと考えてます。実際、共同研究している企業が、我々が作った技術を組み込んだシステムを販売しているので、そういう意味では少しは貢献することができ始めているのではないかと思ってます。そのシステムはノーベル賞も取ったiPS細胞に関するものです。iPS細胞は培養する過程で勝手に分化してしまう細胞があり、その周りにあるiPS細胞にも影響を与えてしまいます。今までは、人間が顕微鏡で見て分化した細胞を手動で取り除く作業をしていたのですが、そのシステムでは、画像認識技術を使って分化細胞を自動的に見つけ、そこにピンポイントでレーザーを打ち込んでiPS細胞の純度を高めるものでした。

 

色々なところで実用化の可能性がありますね

実は様々な研究分野で画像認識技術が必要とされており、医学、細胞生物学、植物学、材料科学、土木工学など、様々な分野の方々と共同研究を行ってます。

 

2012年に名城大学の在外研究員制度を使ってアメリカのメリーランド大学に行ったことにより、ディープラーニングの研究を早く始めることができました。そのため、セミナーでの講演などを行う機会を多くいただき、それをきっかけとして企業や異分野の方々に声をかけてもらえたのではないかと思います。在外研究とディープラーニングブームのおかげですね。

 

今後は、病気を未然に防ぐなどの人類の幸せのために我々の技術を使えるようになると良いなと考えてます。


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