研究活動ニュース
名城大学カーボンニュートラル研究推進機構は、コアメンバーによる第2回研究交流会を2023年3月8日(水)に対面で開催しました。当日はコアメンバーを中心に34名が参加しました。
コアメンバーは、当機構の3つの研究グループ「政策」「環境」「新素材」のいずれかに属している本学の研究者で構成され、その研究分野は多岐に渡っています。この研究交流会は、研究分野や学部の垣根を越えてコアメンバー間の相互理解を深め、メンバー同士の交流の促進を図ることを目的に開催されています。
2022年11月3日(木・祝)に開催した第1回研究交流会の様子は、下記をご覧ください。
<開催レポート>カーボンニュートラル研究推進機構 第1回研究交流会を開催(2022/11/03)
https://sangaku.meijo-u.ac.jp/post-6721/
また、当機構の位置づけと役割、および各グループの紹介については、下記をご覧ください。
カーボンニュートラル研究推進機構
https://sangaku.meijo-u.ac.jp/carbonneutral/
<開催レポート>カーボンニュートラル研究推進機構 第1回シンポジウムを開催(2022/10/10)【後編】
https://sangaku.meijo-u.ac.jp/post-5066/
今回は、第1回とは違うコアメンバーが、自身の研究紹介を中心とした自己紹介(1人あたり約5分間)を行いました。政策グループからは4名、環境グループからは7名、新素材グループから1名が発表しました。
はじめに、平松正行機構長(薬学部・教授)から「昨年からスタートしたカーボンニュートラル研究推進機構において、第2回目の研究交流会を開催できることを大変うれしく思っている。カーボンニュートラルを切り口として、名城大学に所属する研究者が、分野を越えてこのような形でお互いの研究内容を知って情報共有するというのは、おそらくこれまでになかった取り組みであり、非常に喜ばしいことだと考えている。今後の共同研究に繋がっていくことやカーボンニュートラルに限らずオール名城で何かが生まれることを期待したいと思う。学内での研究の活性化という観点から具体的に何をすべきか、ご意見があればお寄せいただきたい。本日はみなさんの研究内容を聴くことを楽しみにしている」と開会のあいさつがありました。
政策グループ
グループリーダー:森杉雅史(都市情報学部・教授)
政策グループは所属学部も研究分野も多岐に渡る16名で構成されており、今回はそのうち4名が発表を行いました。
【発表者】
太田 志乃(経済学部・准教授)
『自動車産業からモビリティ産業への変容 -キーパーツを動態で捉え、その変化を考える-』
平野 達也(農学部・教授)
『バイオメタン発酵残渣を活かした省化学肥料水稲栽培』
鈴木 温(理工学部・教授)
『持続可能な都市構造実現に向けた都市・交通計画と評価支援ツールの開発』
森 龍太(都市情報学部・助教)
『コンジョイント分析と階層分析を融合した事業案の優先順位付け手法の提案』
環境グループ
グループリーダー:吉永美香(理工学部・教授)
環境グループは理工学部・農学部・薬学部所属の研究者を中心とした14名で構成されており、今回はそのうち7名が発表を行いました。
【発表者】
日比 義彦(理工学部・教授)
『海岸域の地下水と海水の相関性について』
武藤 厚(理工学部・教授)
『構造物の省材料・高耐久化』
広瀬 正史(理工学部・准教授)
『雨を観る研究』
山田 宗男(情報工学部・教授)
『自動運転の実整備に向けた運転支援システムの研究開発』
近藤 歩(農学部・准教授)
『試してサボテン! サボテンから生まれた「ノパルノ研究室」の取組み』
加藤 雅士(農学部・教授)
『微生物のチカラを人と地球に役立てる』
大津 史子(薬学部・教授)
『医薬品の適正使用』
新素材グループ
グループリーダー:内田儀一郎(理工学部・教授)
新素材グループは理工学部の研究者10名で構成されており、今回はそのうち1名が発表を行いました。
【発表者】
服部 友一(理工学部・教授)
『生体材料研究室』
ディスカッション
それぞれの発表内容について、様々な意見や質問があがりました。そのうちの一部をご紹介します。
「温暖化による海面上昇で砂浜がなくなってしまうことについて、以前に経済評価をしたことがある。たとえば、温暖化で海面が1m上昇した場合、地下水に塩水がどこまで入り込むかを測定することは可能だろうか。塩水流入による稲作地域への打撃や、弥冨市の金魚養殖への影響など、塩水遡上による産業への経済損失を数値として表せるのでは」という発言に対して、環境グループの日比教授は「地下水の塩水化は比較的古くからある研究なので、論文も豊富にある。自研究とは少し離れたところにあるが、地下水解析を広範囲で行うことは可能であると思われるし、農業土木系にはそういったことを専門としている研究者もいると思う」と話しました。
また、「GETシステム(水田を利用した農産廃棄物からのエネルギー生成手法の開発)を稼働させてメタン生産をすることで、土壌の窒素が増えるという話があった。それにより、翌年その区域は肥料を使用せずとも、慣行区で肥料を使用した時とほぼ同様の生育・収量を確保できたということだったが、さらにその翌年になると窒素が増えすぎてバランスが取れなくなったり、窒素含有量が継続して上昇していってしまったりすることはないのだろうか」という発言に対して、政策グループの平野教授は「まさにその通りで、1年目は施肥なしでも収量は落ちないが、その翌年は効果が薄れたり、何年も継続して同じ水田でメタン生産をすれば悪影響が強く出てしまったり、など、いろいろなパターンが考えられるので、個別に評価をしないといけないと考えている。土壌学が専門のチームメンバーがいるので、土壌の窒素の状態や、稲作前のメタン生産で稲が吸収可能なアンモニア態の窒素がどのくらい土壌に残るのか、などのデータを取ろうとしている。そこから推測して、施肥量を調整することができればと考えている」と話しました。「窒素を消費するような別の研究と連携しても良いかもしれない」という声もあがりました。
ほかには、「リチウムイオン電池生産は、CATL、サムソン、パナソニックなど巨大企業が多数参入しており、価格競争の段階に入ってきていると感じているが、価格競争になってしまうと日本は劣勢なので、経済的観点からコメントがあれば」という発言に対し、政策グループの太田准教授は「リチウムイオン電池は、必ずしも汎用性を持った電池という形で市場投入されているわけではなく、たとえばトヨタ向け、日産向けなど車体や車格によって電池のバリエーションが違い、いろいろなパターンがある。そのため、一概にこの電池が高い安いという比較が難しいのではないかと思う。他方で、アジア系のバッテリーメーカーはいかに汎用性を高くするかという研究開発を進めていて、数多くのOEMと連携することによって規模の経済を図っていくという動きをしている。ここは日本の電池メーカーのかなり弱いところではないかと考えている。リチウムイオン電池を含めて電池を生産するには鉱物資源が必要になるが、そこには地政学的な問題が存在するし、日本は鉱物資源をほぼ持たないので、いかにその利権に食い込んでいくか、商社をはじめとした企業に対して国がいかに支援できるかが大きいと思う」と話しました。
最後に
大野栄治副機構長(都市情報学部・教授)は「第2回目の研究交流会で、また新たな話を聴くことができ、大変有意義な時間だった。カーボンニュートラルは長期的な目標ではあるが、そのプロセスの1つとして研究の活性化は欠かせないものである。異分野の研究者との交流によって、異分野への新たな挑戦あるいは異分野からの知見を取り入れることが可能になる。自研究の軸足はそのままに、守備範囲を広げることで、より一層研究活動が活発になることを期待している。お互いの知見を共有し合い、協力関係を構築することで、名城大学全体の研究活動が活性化し、新たな共同研究が生まれるきっかけになれば」と話し、カーボンニュートラル研究推進機構 第2回研究交流会を終了しました。