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<開催レポート>カーボンニュートラル研究推進機構 第1回シンポジウムを開催(2022/10/10)【後編】

公開日時:2022.11.25
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名城大学カーボンニュートラル研究推進機構は、第1回シンポジウムを2022年10月10日(祝・月)にオンラインで開催しました。『名城大学が歩むカーボンニュートラル達成への道~総合知が生み出す未来へ~』をテーマに、名誉顧問を務める吉野 彰終身教授による特別講演や、研究グループリーダーなどが参加したパネルディスカッションが行われ、全国からのべ300人が視聴しました。

 

<後編>では、パネルディスカッション「専門知と総合知によるブレイク・スルーを目指して」をレポートします。

 

吉野名誉顧問の特別講演の後、以下のメンバーでパネルディスカッションを行いました。

【コーディネーター】

大野 栄治 副機構長(副学長・都市情報学部教授)

【パネリスト】

吉野 彰 名誉顧問

平松 正行 機構長(副学長・薬学部教授)

森杉 雅史 政策グループリーダー(都市情報学部教授)

吉永 美香 環境グループリーダー(理工学部教授)

内田 儀一郎 新素材グループリーダー(理工学部教授)

パネルディスカッション「専門知と総合知によるブレイク・スルーを目指して」

はじめに、平松正行機構長が「カーボンニュートラル社会の実現に向けて待ったなしの状況のなか、名城大学として何ができるかということを研究面からアプローチするのがこの機構である」と口火を切り、機構の位置づけと役割、および3つの研究グループについて紹介しました。

 

カーボンニュートラル機構の位置づけと役割

平松機構長は、「個々の教員の研究やすでに設置されている研究センターの英知をカーボンニュートラルという軸でまとめてブレイク・スルーを目指すという目的で当機構を立ち上げた。7月にはネオジム磁石の開発者である佐川眞人氏を迎えてキックオフ特別講演会を開催した。今後も同氏にはシニアフェローとして意見を頂戴することになっている」と話し、続けて「そもそもなぜカーボンニュートラルが必要か。脱炭素社会とイコールのように言われることが多いが、カーボンニュートラルは人類や地球上の生命体に必要な炭素を生かしつつ排出量をコントロールし、現状よりも排出を増やさずに実質的にゼロにすることを目指すものである。未来の地球を守るためには科学技術だけに頼るのではなく、人間活動、すなわち経済活動や人間そのものに対する見地や知識も重要である」と述べました。

 

また、平松機構長は「名城大学においてカーボンニュートラル関連の研究テーマをまとめたところ、本学には様々な研究が存在することを把握できたので、当機構ではこれらのテーマを大きく政策・環境・新素材の3つのグループに分け、情報共有をしながら総合知をもってブレイク・スルーを目指すことになった。本日のパネリストの先生方をそれぞれのグループリーダーとして、活動を始めたところである」と述べ、各グループの紹介に移りました。

 

 

研究グループ紹介

【政策グループ】

政策グループは、森杉雅史都市情報学部教授をリーダーとして、文系・理系・融合系の研究者で構成されています。複数の学部の研究者が集まっているため、様々な方向からの検討が可能であると考えています。農業と自然環境に基盤を置いている研究者については、すでに研究グループとして研究実績があります。その研究実績であるGETシステムは、発酵によりバイオメタンを生産して地産地消の再生可能エネルギーとして利用します。また、残りを肥料とすることによって植物の再生にもつながります。自然と環境にやさしい炭素循環を考える研究です。

 

【環境グループ】

 

環境グループは、吉永美香理工学部教授をリーダーとして、多様な分野の研究者で構成されています。コアメンバーの研究テーマの対象・主要技術などをキーワードとして単純化し、学内連携の可能性を探る図を作成しました。中心からの距離と連携の度合いは比例していません。特に魅力的な技術についてはさまざまな研究対象に運用が可能で、フィールドをまたいだ普遍的で共通の概念もありそうです。コアメンバー同士の連携はもちろん、それぞれの研究者を中心に、さらに広いフィールドをつなぐネットワークの構築を目指しています。また、生活の豊かさを視野に入れると、文化的側面や経済、法律といった分野も重要になので、それらの専門知識をもつ文系研究者とも積極的に連携がしたいと考えています。

 

【新素材グループ】

 

新素材グループは、内田儀一郎理工学部教授をリーダーとして、青色LEDを発明しノーベル物理学賞を受賞した故 赤﨑勇特別栄誉教授の研究グループ、カーボンナノチューブを発見した飯島澄男終身教授の研究グループ、そして、本日ご講演いただいたリチウムイオン二次電池の発明でノーベル化学賞を受賞した吉野彰名誉顧問の研究グループといった、世界トップレベルの材料研究が中心となっています。

また、このように本学総合研究所内にはあらゆる分野の研究拠点が存在します。これらセンターを集結して、さらにセンター外の有望な材料研究の研究者の英知を集めてカーボンニュートラルに資する研究を推進し、環境新素材・超省エネデバイスの創製を目指していきたいと考えています。

 

最後に、平松機構長は「これら3つの研究グループを有機的につなぎ、総合知と専門知によるブレイク・スルーを目指して活動する予定であり、本日はその方向性について議論ができればよいと考えている」と述べました。

 

続いて、コーディネーターの大野副機構長は「本日のパネルディスカッションは、吉野名誉顧問の講演テーマを受けた形で設定した。カーボンニュートラル社会実現に向けて、様々な課題解決が必要であるが、そのなかには個々の専門的知識や技術で解決できるものと色々な分野と技術を融合しないと解決できないものがあると感じている。そのために名城大学としてどのような方向で取り組んでいけばよいかを本日のディスカッションを通じて方向性を見出せればと考えている」と述べました。

 

「総合知」は必要なのか

吉野名誉顧問から、1つの例としてこんな話がありました。「本日10/10はノーベル経済学賞の発表があるが、こんなテーマが受賞したら面白いかなと思っている。それはQRコード。QRコードは株式会社デンソーが開発した技術で、世界に対して無償供与が宣言されて、結果としてグローバルスタンダードになった。では、ノーベル何賞の対象になるのか。それは経済学賞。QRコードが生まれたことにより、経済システム、特に物流関係がガラッと変わった。QRコードを利用して新しいシステムを作った経済学者が間違いなく存在する。物流に大きな変化が起こったことで、フードロスを含めて効率的な社会を生み出し、地球環境にも大きな貢献をしている。これはQRコードの技術開発だけではありえないことであって、その特徴を最大限に生かして新しい経済システムや社会システムを作り上げて初めて技術が生きてくるのである。もちろん、逆も真なりで、経済学者だけが色々と議論してもQRコードが普及している今の社会は作り出せない。これは、まさに総合知であって、全く違う分野の人たちが手を握ることによって初めてイノベーションが生まれる」

 

続いて、各グループリーダーからも発言がありました。

 

森杉政策グループリーダーは、「先ほどの話であったGETシステムは、簡単に言うと、稲作後の水田から稲わらを集めて、GETシステムに投入して発酵させて生産されたメタンを再エネとして利用するということ。さらに稲作には発酵残渣を供給して水田の維持にも貢献する。投資費用が低く色々な形で適用が可能ではないかと考えられている。当初は、GETシステムのすぐ横に発電機と充電スタンドを置いて、農業機械にすぐに転用して使う、地産地消の形でエネルギーを使い切るという構想だった。しかし、採算性が低いことが最大の問題となった。解決法として、地元住民にボランティアとして楽しんで参加してもらい、住民参加型再エネ事業とすれば、効率的に運用できて費用を抑えることができるのではないかと考えた。また、地元の町おこし材料とすれば普及可能なのではないかと提案があった。それを持って簡単な収支バランスの計算をしてみると、初期値に比べてかなり採算性が上がり、これにカーボンクレジット(*5)を足し合わせると、さらに採算性を高めることができそうである。システムの付加価値を高めて、関連する産業とともに発展させていくという工夫があって初めて技術が伸びる」と述べました。

 

吉永環境グループリーダーは、「多くの研究者は、マテリアル(研究の対象物)もしくはメソッド(方法や分析、ツール)のどちらかを研究の主たるもの、自分のウリにしていると思う。私は建築に籍を置いているが、今まで機械・電気・農学などの分野の研究者と共同研究を行ってきた。経験的に、同じマテリアルに対して違うメソッドで研究をしている人とはつながりやすいと感じている。逆にメソッドが近いとテーマが食い合ってライバルになってしまう可能性が高い。よりよいアイデアを生む可能性が高い絶妙な距離感のある研究者同士が本機構を通じて出会えると良い。まずは、カーボンニュートラルに直接関係する研究をしているかにこだわらず、他の研究者とコミュニケーションを取って刺激しあうことについて興味・関心があると回答のあった研究者にコアメンバーとして参加してもらった。そのため、お互いの吸収しやすい素地を生かし、スムーズに始められると考えている。先ほど吉野先生がおっしゃっていたQRコードは、マテリアルでもありメソッドでもあり、非常に文理融合しやすい研究テーマだと思う。私自身は、最先端の素晴らしいものを作る研究ではなく、高効率化によって今使うエネルギーを減らすという、いわばリデュースを扱っている。自分の便利さを損なわずに同じ快適さのままでエネルギーをリデュースするには、QRコードのようなデジタルのメソッドはもっともっと使えるのではないかと思っている。また、デジタル技術を活用し、研究者の専門知識を学内だけでなく、地域貢献に使う方法もいろいろと考えていきたい」と述べました。

 

内田新素材グループリーダーは、「名城大学は幸運にも赤﨑先生、飯島先生、吉野先生という三巨頭がおり、貴重なリソースが十分備わっている。先生方の伝統をLED研究の上山智教授、カーボンナノチューブ研究の丸山隆浩教授らがしっかり引き継いで、近年ではLEDのレーザー発信に成功し、ナノ材料に関しても目覚ましい成果をあげている。さらに若手の我々は、カーボンニュートラル研究推進機構でセンター間の融合を一気に促進し、ネクスト名城大学に向けて新たに何ができるかを考えていきたい。具体的には複数センターで協力して、新たな材料開発や農業分野への応用、デバイスのシステム化などを発信できればと考えている」と述べました。

 

産官学連携を機能させるためには

続いて大野副機構長から、「社会実装する際には産業界との連携が必要になってくる。産官学連携を機能させるためにはどのような取り組みが必要か、まず先に人材交流が思い浮かぶが、資金調達など取り組むことは多岐に渡る」と提起がありました。

 

それを受けての発言を一部抜粋してお届けします。

 

【吉永環境グループリーダー】日本の社会システムの非常に特殊なところとして、法規制がゆるい部分と昔の過度な規制がそのまま残っている部分とが併存しているように思う。住宅の給湯や暖房に利用する太陽熱エネルギーの環境価値を定量化し、経済市場に載せようとする研究の際にそれを感じた。熱量を計るための装置の基準が計量法で詳細に定められているため、その装置導入がコストアップにつながり「足かせ」となってしまった。社会実装をする段階で行政側のしばりに引っかかりやすいという部分は、諸外国と比べても日本の大きな課題だと感じている。

 

【吉野名誉顧問】行政を含めてカーボンニュートラルを実現しなくてはならないという認識はもう十分すぎるほどある。でも具体的な知恵がない。彼らを動かすためには知恵をあげればよい。それが産官学の切り口だと思う。本学の立場に立ってどういう切り口で入っていけばよいか。入口は2つある。1つ目は『技術』。研究活動によって新しい技術の芽を作ってそれが実れば、これだけ地球環境に貢献しますよ、いかがでしょうか、と投げかけること。そしてもう1つは『裏口』。つまり、社会システム・経済システムから入っていくやり方。我々が議論したら、こんな社会システムのプランが出てきましたよ、というのも1つの切り口。もちろん、実績にするためにはそれを裏付ける技術も必要である。企業なり本学の自然科学分野の研究者と一緒に進めていけばよい。2つの切り口が存在するということを理解すべきだと思う

単にシステムを考えなさいと言われても具体的なイメージは出てこないと思うので、ぜひ考えてほしいのは『特許』。理系の研究開発、それを特許として出すというのが従来の考え方だったが、今主流になっているのはビジネスモデル特許。こんなシステムを発案しました、ということを特許にすることが成り立つ。実現すると大きなメリットが生まれると審査官が納得すれば、ビジネスモデル特許として成立する。経済学部の学生の卒業研究テーマで新しいビジネスモデルを考えるということをやってみるとよいと思う。決して特許は理系だけではない。例えば、フェイスブックのビジネスモデルを考えてみてほしい。きわめてシンプルである。自己負担でサイトを立ち上げて、参加を希望する人に無料で参加してもらい、情報を自由に使ってもらう。おもしろいコンテンツに人が自然に集まり、スポンサーがやってきて広告料がフェイスブックに入る。参加者は便利だと喜んで使っていて、フェイスブックを儲けさせるために懸命に協力していることになる。これがビジネスモデル。そういう発想がもし日本から生まれて、先駆けてビジネスモデルとして特許にしていれば、特許料収入があったはずである。本学として取り組むべき産官学は、新しいネタや完成品でなくてよいので、『ひょっとしたらおもしろいかも』というネタを企業なり行政なりに提案できるかということが1つ。そして、『ビジネスモデルの提案』、この2つがあると思う。

 

【平松機構長】若い能力、若い知恵はとても重要で、固定観念がない状態での発想をどんどん学生に出してもらい、固定観念を持った教員がそれをどう生かしていくかという視点があってもおもしろいのかもしれない。それをやるために名城大学に入るということもありうるかもしれない。卒業研究で、学部の分野をまたいだディスカッションができるゼミがあってもおもしろい。教員レベルのグループだけではなく、学生レベルのグループがあってもおもしろそうだ。

 

【吉野名誉顧問】この機構のミッションとして学生や院生に対する教育ということがあると思う。これから本学を卒業して社会人となったときに、どんな職に就いたとしても、カーボンニュートラルという問題がつきまとうことになる。社会に出て行ったときによい仕事ができるかどうかは、在学中にカーボンニュートラルの問題についてどこまで真剣に議論したかに左右される。

 

名城大学の弱点はどんなところにあるか

 

【森杉政策グループリーダー】当機構の構成メンバーは現状、理工学部の研究者が大半を占めている。カーボンニュートラルというと、他大学を見ても非常に理工的・技術的に攻めようとしているところが多い。私は経済学修士で工学博士なので、どちらの世界も経験しているが、いざ経済学部の学生がビジネスモデルを作れと言われても、しり込みしてしまうのではないかと思う。経済学のベーシックなところを学習して学部生は終わってしまうので、技術を勉強するタイミングがない。研究者ですらしり込みしてしまい、敷居の高さを感じざるを得ないと思う。実際に加われば、よい提案は多数出てくると思うので、心理的な壁をブレイク・スルーする仕組みを作らないといけないと思う。

 

【会場参加者(コアメンバー)】本学の弱点として浮かんだのは研究スタッフ不足がかなり大きいと考えている。外部資金を獲得しても、博士課程の学生に賃金を出すことができないことがほとんどである。博士課程の学生がもう少しいれば研究は進むと思うが、経済的な負担で進学を断念する学生がほとんどである。名古屋大学は学内の奨学制度を作ったことにより、日本人の博士課程進学希望者が急増した。本学もそういった制度を導入できればさらに研究力が上がると考える。

 

質疑応答

【ウェビナー参加者(一般)】来春、ガス会社に就職を予定しているが、今後日本では、ガスはエネルギーとして使われなくなってしまうのか。

 

【吉野名誉顧問】今後のエネルギーで都市ガスは一番やっかいなところにあると思う。発電所はただ燃やすだけなので、電力においては再エネキャリア(水素・アンモニア・e-fuel)は何でも構わないが、都市ガスではそうはいかない。水素は以前痛い目にあっているので選択肢にはないし、アンモニアは配管で各家庭に送ることは不可能なので、選択肢は非常に狭い。ただ今はありがたいことに天然ガスが存在するため、都市ガスはある程度コストがかかっても許容される。コスト面での余裕があるのはガス会社のアドバンテージである。都市ガスはプロパンガスを含めてなくなることはない。それを最終的に何にするのかということをガス会社はおそらく今一番悩んでいると思う。ガス会社に就職するなら絶好のチャンス!それに対して答えを出してあげればよい。

 

閉会のあいさつにかえて

本日の総括

最後に、大野副機構長から「カーボンニュートラル研究推進機構立ち上げにあたり、今後どういう方針で進めていくかということをこのシンポジウムを通じて明らかにしようとしたところである。今回だけで明確にクリアになったというわけではないが、さまざまな分野にわたる専門家の知恵を融合して課題解決にあたろうという方針を確認することができた。新しい素材の発明や新しいシステムの構築については、専門家の集団がすでに活躍しており、どんどん進めていきたいと考えている。また一方でその開発したものを社会実装することの難しさも感じている。人文社会科学の研究者の知恵も加味しながら、カーボンニュートラルに向けて取り組んでまいりたい。1つキーワードとして『ビジネスモデルを作る』という提案を吉野名誉顧問からいただいた。新しい発想をするということも今後の大きな課題である。学生も巻き込んで、学生自身の起業家精神も養成していきたい。第1回シンポジウムはこれで終了するが、第2回では成果を報告し始められるとうれしい」とコメントがあり、カーボンニュートラル研究推進機構 第1回シンポジウムは終了しました。

 

今後も名城大学カーボンニュートラル研究推進機構の活動にご注目ください。

 

 

[脚注]

*5 カーボンクレジット

クレジットとは、再生可能エネルギー(太陽光発電や風力・水力発電など)の導入やエネルギー効率の良い機器の導入(=削減プロジェクト)もしくは植林や間伐等の森林管理(=吸収プロジェクト)により実現できた温室効果ガス削減・吸収量を、決められた方法(=方法論)に従って定量化(数値化)し取引可能な形態にしたものです。
クレジットは、電子システム上の「口座」において、1t-CO2を1単位として管理され、売買によりクレジットが口座間を動くことを「移転」といいます。

(出典:http://offset.env.go.jp/about_credit.html)

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