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【採択研究紹介】サイケデリック薬物療法による革新的うつ病治療研究センター

公開日時:2025.04.01
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研究センター部門 令和7年度 研究センター推進事業費 研究代表者:衣斐大祐(薬学部・准教授)

研究内容・今後の展望

 このたび、「名城大学総合研究所 令和7年度学術研究奨励助成制度・研究センター推進事業費」の支援を受け、令和7年4月より『サイケデリック薬物療法による革新的うつ病治療研究センター』を設立する運びとなりました。私は本センターの研究代表者を務めます薬学部の衣斐大祐と申します。本センターでは、薬学部および農学部の教員に加え、学外の先生方とも研究協力体制を構築し、うつ病に対する創薬研究を推進してまいります。薬学部からは、私のほか、杉山栄二 准教授および𠮷見陽 准教授、農学部からは兒島孝明 准教授が参画いたします。

 

設立の目的

 うつ病は、気分の落ち込みや憂うつ感、やる気の低下といった精神的な症状に加え、眠れない、疲れやすい、体がだるいなどの身体的な症状が現れる精神疾患です。日本人の約15人に1人が一生のうちに罹患するとされる、非常に身近な病気でもあります。うつ病の治療には、精神療法や薬物療法のほか、休養や環境調整などさまざまなアプローチがありますが、本研究センターでは主に薬物療法に着目し、研究を進めます。

 1959年に本邦ではじめの抗うつ薬として「イミプラミン」が上市され、その後、さまざまな抗うつ薬が開発されてきました。しかし、これらの抗うつ薬によるうつ病治療には課題が多く、再発率の高さに加え、治療効果が認められない患者が約30%存在すること、さらに効果発現までに数週間を要することなどが指摘されています。このような背景から、うつ病は依然として治療満足度の低い疾患とされています。近年、マジックマッシュルームの幻覚成分「シロシビン」や「LSD」などのサイケデリックス(精神展開薬、セロトニン作動性幻覚薬)が、うつ病、難治性(治療抵抗性)うつ病、双極症(躁うつ病)のうつ病相などに対して即効かつ持続的な治療効果を示すことが報告されています。こうした背景を受け、米国食品医薬品局(FDA)はシロシビンをうつ病の革新的治療薬となり得ると発表し、現在、世界各国で臨床応用が進められています。しかし、シロシビンを含むサイケデリックスは、幻視を中心とした強力な幻覚作用を有することから、世界各国でその使用が厳しく制限されています。この強力な幻覚作用が、シロシビンの臨床応用を妨げる大きな要因となっています。以上を踏まえ、サイケデリックスを用いたドラッグデリバリーシステムや創薬化学的手法による構造変換を駆使し、幻覚を引き起こさない新たな革新的うつ病治療薬の開発を目的として、本センターを設立する運びとなりました。

 

本センターの研究活動内容

 本研究センターは、以下の多様な専門分野の融合による分野横断型の学際的研究を推進し、多面的かつ多階層的なアプローチによって、幻覚を引き起こさない新たな革新的うつ病治療薬の開発を目指します。

【薬理学】薬の作用機構を明らかにする学問

【医療薬学】薬を正しく安全に使用する方法を探究する学問

【薬物送達学】薬効成分を目的部位へ届け、必要な時間だけ作用させる技術を研究する分野

【分子生物学】細胞を構成する分子から生命現象を解明する学問

【分子イメージング学】生体内の分子情報を画像化する技術を研究する分野

【データサイエンス学】生命現象に関わる膨大なデータから、問題解決に必要な知見を引き出す分野

【創薬化学】有機化学を基盤に、医薬品の開発や創製に貢献する学問

【構造生物学】タンパク質など生体高分子の分子機能を、その構造から理解する学問

異分野融合を実現するため、本センターでは、本学薬学部の衣斐・杉山・𠮷見、農学部の兒島に加え、京都大学、筑波大学、東京薬科大学、藤田医科大学など学外の研究者とも密に連携し、研究を推進してまいります。

 

本センターの教育への貢献

 最近の創薬では各研究分野の細分化が進み、新薬開発はより一層、複雑化しており、分野横断型の学際的研究が求められています。そこで、本センターの本学教員は、卒業研究を通じて学生が異分野の最新技術に触れる機会を設け、各専門分野のみならず他分野の幅広い知識を身につけた薬剤師や創薬を志す研究者の育成にもつなげていきたいと考えております。

 

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