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<開催レポート>講演会「気候変動と地盤工学」を開催(2024/3/14)

公開日時:2024.03.21
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自然災害リスク軽減研究センターとカーボンニュートラル研究推進機構は、公益社団法人 地盤工学会中部支部、名城大学技術士会と共催で、セミナー部会講演会「気候変動と地盤工学」を2024年3月14日(木)に名城大学天白キャンパスで開催しました。

 

茨城大学GLEC(茨城大学地域環境共創機構)研究員であり、一般社団法人LRRI代表理事の安原 一哉 茨城大学名誉教授を迎えた本講演会は、学内外から46名が参加しました。

 

冒頭に、名城大学技術士会会長の尾中宗久氏から、開会のあいさつがありました。

 

「気候変動対応策の実績と地盤工学的貢献への期待」と題された安原教授の講演は、能登半島地震で被災された方々へのお見舞いから始まりました。次に、環境省の地球環境研究総合推進費に採択され、課題代表者として研究推進した経験や、茨城大学からの委託業務で、日本における気候変動対応策の実情をレビューした経験など、気候変動との自身とのかかわりを述べました。

 

そして「今は混迷と混乱の時代であり、それには気候変動が大きくかかわっていたり、場合によっては気候変動自体が 引き金になっている」と述べ、「災害には『複合災害』と『連鎖災害』があり、2004年の新潟県中越地震は『複合災害』の典型的事例で、2011年の東日本大震災は『連鎖災害』のそれである。要因が複合化するにつれて、災害は巨大化・激甚化・広域化しており、安全で安心な戦略はどのように構築すればよいのか。災害対策と適応策にギャップがあるのが現状である」と述べました。

 

続いて、世界と日本の災害事情を主に数値で紹介した後、日本における最近の大きな地震と土砂災害の発生場所を示し、「以前は地震は東日本、土砂災害は西日本が多いという傾向にあった。実際眺めてみるとわかるが、今は日本中でまんべんなく起きている」と述べました。また、「土砂災害の傾向を見ると、土砂災害は大規模な地震よりも猛烈な雨に密接にかかわっていることがわかる」と述べ、土砂災害と複合災害の事例を紹介しました。

 

日本における地球温暖化の緩和策は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の提案に基づいています。それは、節電や省エネ、電気自動車(EV)普及やソーラーパネル設置といったような、個人でできそうなことと、再生可能エネルギーの利用や森林の維持と増加といった個人ではできないことの両方があります。安原教授は「原因を少なくする『緩和』と影響に備える『適応』を融合させて進めるには、政策や技術の整理が必要である」と述べ、その後、日本における気候変動適応策の実情と成果を紹介しました。

 

茨城大学の三村信男名誉教授によると、適応策の革新性・システム転換性は、『新しい設計条件や新しい考え方を含むもの』『制度的に革新的なもの』『対策手法が画期的なもの』に3つに大別できます。特に『制度的に革新的なもの』として、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)という言葉が使われていますが、気候変動に対する革新的・システム転換的適応策の事例はいろいろとあるものの、地盤工学的な提案は多くは見られないという事情を踏まえ、「今まさにCX(クライメート・チェンジ・トランスフォーメーション<安原教授提唱>)が必要である」と安原教授は述べました。

 

では、気候変動対応における地盤工学の役割とはなんでしょうか。緩和策と適応策の融合が重要であるものの、実際は非常に難しいのが現状です。安原教授は国内における活動例や国際的取り組みの例を紹介し、「途上国においては、事前対応をしても災害が起こらなかったら無駄になるという考えが根強く苦労してきたが、コストベネフィットを念頭に置いて検討することを主張し続け、近年少しずつ変わってきた」と自らの経験を踏まえて述べました。

 

安原教授は最後に、IPCCにおける地盤工学の位置づけと展開施策を紹介し、まとめとして、IPCCにおける地盤工学の現状を改善する具体的な方策を講じることや、技術者倫理や研究者倫理を念頭に置いたうえで、学術向上・技術向上志向研究に加えて、政策反映志向型研究を重視すること、そして、戦略的な関連ジャーナルへの投稿を提案しました。「気候変動対応を通じて、『地盤工学』の認知を一層拡げてまいりましょう!」と呼びかけ、講演を終えました。

 

講演後の質疑応答では、参加者からの質問1つ1つに丁寧な回答がありました。名古屋大学の野田利弘教授からは、広大な海抜ゼロメートル地帯を抱える中部地方においては、地盤工学は極めて重要であるという話がありました。

 

 

次に、カーボンニュートラル研究推進機構の小高猛司副機構長から、現在オンライン開催中の「名城大学リサーチフェア2023 ~カーボンニュートラル実現への道のり~」の紹介がありました。当機構のコアメンバーが中心になって、名城大学の研究を広く紹介しているもので、この日は学術研究支援センターの長岡由佳URAが実際に3Dバーチャル空間を動き回って、参加者に向けたデモンストレーションを行いました。リサーチフェアは2024年3月31日まで開催しています。下記からぜひご訪問ください。

 


 

<イベント情報>「名城大学リサーチフェア2023」が開幕!3月1日から31日まで開催中!!
https://sangaku.meijo-u.ac.jp/post-20369/

 


 

最後に、カーボンニュートラル研究推進機構の大野栄治機構長(副学長・都市情報学部教授)から閉会のあいさつがあり、セミナーは終了しました。

 

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