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<開催レポート>異分野融合で新たな知の開拓へ!「T-Gexアソシエート 若手研究者 研究交流会」を開催(2026/08/04)

公開日時:2026.09.07
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「世界的課題を解決する知の開拓者(以下、T-GEx)」は、名古屋大学を中心に実施されている事業で、世界的な課題の解決に向けて新たな知を創出し、社会の未来を切り拓くことのできる若手研究者の育成・支援を目指しています。本学をはじめとする近隣の大学や企業からも若手研究者がアソシエートとして参加し、それぞれの専門性を生かしながら、分野や組織の垣根を越えて互いに切磋琢磨しています。
 
2026年8月4日、天白キャンパスのタワー75の15階「そらいろラウンジ」にて、本学からT-GEx事業に参加している若手研究者が「研究交流会」を実施しました。本交流会は、情報工学部の野崎佑典 准教授が「T-GExの名城大学チームとして、分野を越えて交流し、つながりを深める機会をつくりたい」という思いで開催を呼びかけました。若手研究者がそれぞれの専門分野や研究内容を紹介するとともに、意見交換を通じて相互理解を深め、専門分野の垣根を越えた研究者同士のネットワークを築く場づくりを目指し、今回はその第一歩としたいとのことでした。
 
当日は、4名が参加しました。前半では、それぞれの研究内容を紹介しながら、専門分野の異なる研究者同士で活発な意見交換が行われました。後半では、研究活動だけでなく、学部ごとの文化や研究環境の違い、若手研究者が日頃感じている悩みや課題などについても話題が広がり、率直な意見や経験が共有されました。
 
本記事では、参加者の研究紹介とともに、当日の交流の様子をお伝えします。
 
T-GExの詳細はこちら
 
 

多彩な専門分野が交錯する「ショートプレゼンテーション」


 
前半は、情報学・薬学・社会学という文理の枠を超えた4名の若手研究者によるショートプレゼンテーションが行われました。それぞれの研究背景やテーマ、研究手法、今後の展望などが紹介され、参加者からは専門分野を越えてさまざまな質問や意見が寄せられました。
 
1. 情報・AIセキュリティの最前線(情報工学部・野崎佑典 准教授)
私たちのデータが日常的にやり取りされる現代において、情報の漏洩や改ざん、なりすましを防ぐセキュリティ技術は不可欠です。野崎氏は、暗号などの計算が数学的に安全であっても、それが実際にスマホやPCなどの「電気回路(ハードウェア)に実装され、実際に動作する瞬間」に生じる物理的な脆弱性に焦点を当てています。特に、デバイスが動く際の「消費電力」や「電磁波」といった物理的な漏洩情報から暗号鍵を割り出す「サイドチャネル攻撃」の解析と、その防御対策の研究が紹介されました。さらに最新のトレンドとして、生成AIなどの普及に伴うAIハードウェアへの攻撃や情報漏洩リスクに触れ、AI利用時のプライバシー設定や強固なAIセキュリティ実装の重要性を強調しました。
 
2. 膵臓がん治療への挑戦と新規薬物開発(薬学部・河地真理子 助教)
日本人の死因の上位を占めるがん。その中でも、特に「膵(すい)臓がん」は5年生存率が低く、治療が難しいがんの一つとされています。その要因の一つとして、膵臓がんの周囲に免疫細胞や緻密な線維性の組織が存在することで、治療薬ががん細胞まで十分に到達しにくいことが挙げられます。河地氏はこの課題を解決するため、免疫細胞の活性化を抑制するブレーキ役を担う免疫チェックポイント分子「VSIR」に着目しています。研究により、VSIRが膵臓がん細胞自体にも顕著に発現し、その生存や増殖に関与していることを明らかにしました。現在は、VSIRの発現を抑制することでがん細胞の増殖を抑えるとともに、免疫のブレーキを解除して本来の免疫細胞ががんを攻撃できるようにする、相乗効果を狙った革新的な治療薬(VSIR対応化合物)の創出に向けて、共同研究・スクリーニングを進めています。
 
3. 薬の効き方に関する分子シミュレーション解析(薬学部・仲吉朝希 助教)
体内に投与された薬は、身体にとって「異物」であるため、適切に代謝され排出される必要がありますが、ここには個人が持つ「遺伝子の多様性(個人差)」が大きく関わっています。薬の分解や排出をコントロールする代謝酵素(タンパク質)の働きが強すぎると、薬は効果を出す前に消失し、逆に弱すぎると体内に長く留まって副作用を引き起こします。 仲吉氏は、酵素が薬をキャッチして結合し、反応して体外へ出すまでの一連の体内動態サイクルを研究しています。実験室でのウェットな実験では実験だけでは捉えにくい、遺伝子の個人差によって「酵素のどのようなミクロ構造が変化し、それが薬の代謝や効果にどのような影響を与えるのか」という分子レベルの相互作用を、コンピューターシミュレーションを用いて解析しています。こうした研究を通じて、新薬の設計や、一人ひとりの体質に応じた最適な薬物療法の実現への貢献を目指しています。
 
4. 家族社会学と社会的孤立・排除の防止(人間学部・髙橋香苗 助教)
社会学の立場から、私たちが生きている社会や人々の人生の歩みを追う髙橋氏は、現代社会の深刻な課題である「社会的孤立」や「社会的排除」を防ぐための実践的な研究を進めています。これまで「ギャルママ」と呼ばれる母親たちが、独自の生き方や子育てに関する規範と葛藤するプロセスを研究してきました。今回の発表では、「地域移動(引っ越し・転勤)」生じる人間関係の断絶や再編成に焦点を当てた研究について紹介しました。名古屋市の子育て支援センターとも連携しながら、孤立しがちな母親たちへのインタビュー調査を行い、一人ひとりの声から社会的孤立の実態を捉えています。また、高校卒業から40歳になるまでの対象者を毎年追跡し、今年で24年目を迎える大規模な「長期パネル調査」の代表として、学歴や世帯収入などが人生の節目(就職、子育て等)に与える影響を多角的に分析しています。
 

 
 

垣根を越えた意見交換と共通の課題

後半は昼食を交えながら、リラックスした雰囲気の中で意見交換が行われました。それぞれの発表に対する素朴な疑問や研究に関する相談をきっかけに、学部ごとの文化や研究環境の違い、若手研究者が直面する共通の課題など、幅広いテーマについて意見が交わされました。
 
理系・文系による発表時間の捉え方や、研究室の運営方法の違いなどについても話題が広がり、異分野の研究者だからこそ得られる新たな気づきが生まれました。
さらに、生成AIの利用におけるプライバシー設定や情報管理、実験設備の増設に伴う電源容量の制限、女性教員や若手教員の少なさなど、それぞれの専門分野にとどまらず、大学の研究環境に共通する課題についても活発な議論が行われました。
 

 
 

今後の学際的連携とネットワークの広がりに期待

今回の研究交流会は、少人数による試行的な開催ではありましたが、それぞれの研究分野や研究手法への理解を深めるとともに、研究・教育に関する悩みや課題を気軽に相談し合える人的ネットワークを築く貴重な機会となりました。
今後は、参加する若手研究者の分野や人数を広げるなど、さらなる交流の可能性も検討されています。
 
専門分野の異なる研究者が互いの研究を知り、新たな視点や気づきを得ることは、分野を越えた共同研究や新たな学際的連携につながる可能性があります。今回の研究交流会は、若手研究者同士のつながりを深めるとともに、本学における分野横断的な研究交流や学際的連携の広がりを期待させる、意義深い機会となりました。
 
 

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