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「名城大学 新型コロナウイルス対策研究プロジェクト」研究成果について<第1回>

公開日時:2022.10.21
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本学では新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機に立ち向かうため、2020年度に「名城大学 新型コロナウイルス対策研究プロジェクト」を創設しました。2020、2021年度に採択された4プロジェクトの研究成果をご紹介します。

 

<採択時の様子>

「名城大学 新型コロナウイルス対策研究プロジェクト」に薬学部の2件を選定

https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_23801.html

「名城大学 新型コロナウイルス対策研究プロジェクト」 2021年度も薬学部の2件が選ばれる

https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_26546.html

 

第1回は、2年連続(2020年度・2021年度)でプロジェクトが採択された、薬学部の神野透人教授と岡本誉士典准教授、青木明助教に伺ったお話をお送りします。

 

 

プロジェクト名:

「ゲノム分子疫学的調査への応用を指向した新型コロナウイルスSARS-CoV-2遺伝子変異検出法の開発」(2020年度)

「新型コロナウイルスSARS-CoV-2の変異株スクリーニングの検査方法としての実用化に向けた高解像度融解曲線(HRM)分析を利用した試験法の開発」(2021年度)

 

私たちが所属する「衛生化学研究室」は、公衆衛生、つまり、一般市民の健康を守り、健康を増進するためにはどういったことが必要かを研究しているところです。2020年の6月に第一波が少し落ち着いて、ようやく大学の入構禁止が解けた段階で、猛威をふるっている新型コロナウイルスに対して、大学人としてなにかできることはないかと私たちで相談したというところが最初になります。

 

その頃に新型コロナウイルスの変異株が広まり始めているという報道が盛んに出始めました。今後、感染が世界規模で拡大していくと、さらにいろいろな変異株が出現して、属性が変化した株が生じるだろうということは想像に難くありませんでした。そうしたときに、どんな変異株が生じているか、それがどれくらい広がっているかを素早く把握する方法が必要になるだろうと考え、それを開発することが私たちが目指している「衛生化学」というアプローチとして最適ではないかという話でまとまりました。

 

その後、ご存じの通り、いろいろな国名がついた変異株が次々と出現し、それに対応する識別方法の開発に着手しました。後から振り返って見ると、複数の変異株の識別方法を開発することができましたが、当時はどんな変異株が出現するかまったくわからない状態だったので、新規の変異株にいかに早く対応できるかをとても重要視しました。

 

変異株の識別には、HRM(High-resolution melting/高分解能融解曲線)分析という方法を採用しました。具体的には、二本の鎖からなるDNAは、熱をかけるとその二本鎖が離れ、冷ますとまた元の二本鎖に戻るという性質がありますが、その塩基配列によって二本鎖が離れる温度に違いが生じます。その温度とパターンの違いを測定することによって、変異があるかどうかを素早くチェックすることができるというわけです。

 

薬学部3年生の学生実習にて食品衛生に関するテーマとして、名古屋コーチンと一般的なブロイラーの識別をしているのですが、実は変異株の識別にもこの方法を使っています。言い換えると、学生でもできる非常に簡単な手法ということになり、この点が識別方法として非常に優れていると考えています。最終的には、第5波で最大の流行を引き起こしたデルタ株にまで対応したというところが、2020年度の成果と言えると思います。

 

2021年度には、さらにオミクロン株が猛威をふるい、第6波がやってきました。成果の1つは、その識別方法を開発したことです。そして、最大の成果は、地方自治体の衛生を担う、つまり、国の感染症対策の最前線に立っていると言っても過言ではない、愛知県衛生研究所と名古屋市衛生研究所の方々と共同研究を開始できたことです。立花理事長、小原学長、平松副学長、小髙学術研究支援センター長をはじめ、学内の多くの関係者にご協力いただき、大変感謝しております。

 

このプロジェクトは終了しましたが、愛知県とは引き続き共同研究を進めています。オミクロン株はBA.1系統からBA.2系統へ主役が交代し、さらに異なる変異を持った系統や組換え体も登場しているので、その対応を進めています。

 

この識別方法は、日本で言うとクラスター対策に役に立ちます。たとえば、クラスターが発生した際に、同じ変異株のクラスターなのかそうではないのかということが識別できると、感染経路を追う上で、非常に重要な情報を得ることができます。また、ほかの変異が起こるインフルエンザウイルスなどにも応用が可能です。

 

今後の展開としては、正直に言うと、今はどんな変異株が出てくるかということよりも、感染者数自体を把握することに重きが置かれているため、新型コロナウイルス対策としてこの識別方法を使うということは減っていくと考えています。ただ、ほかの感染症や食品衛生に応用可能だということが判明したので、本来の衛生化学分野での広い応用を目指していきたいと考えています。

 

私たちは「創造型実学」と呼んでいるのですが、サイエンスとしてのサイエンスではなく、「実学」の名の通り、世のなかの人のために役立つ化学を生み出すことを命題としています。こういったアプローチが、まもなく100周年を迎える名城大学のさらなる前進のために貢献できればと考えています。

 

(取材日:2022-06-22)

 


 

当プロジェクトは終了しましたが、地方自治体との共同研究は継続しており、その研究成果を学術雑誌や学会発表を通して公表しています。このうち、2022年度に実施した愛知県衛生研究所との共同研究において、オミクロン株の亜系統であるBA.5株を迅速に識別する方法を開発した論文が、専門誌「VIRUSES-BASEL」に掲載されました。

 

Rapid Identifi cation of SARS-CoV-2 Omicron BA.5 Spike Mutation F486V in Clinical Specimens Using a High-Resolution Melting-Based Assay
https://www.mdpi.com/1999-4915/14/11/2401

 

(追記:2022-12-12)

 


 

2023年度も愛知県衛生研究所との共同研究を継続しており、従来のHRM法では識別困難であったN501Y変異を識別可能な改良型HRM法を開発した論文が、専門誌「Journal of Virological Methods」に掲載されました。

 

A modified high-resolution melting-based assay (HRM) to identify the SARS-CoV-2 N501Y variant

https://doi.org/10.1016/j.jviromet.2023.114678

 

(追記:2023-11-16)

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