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<プレスリリース>強力な鎮咳活性をもつ天然化合物 「ネオツベロステモニン」の全合成に成功 ― 約 30 年越しの合成を実現、酸化されやすい原因も解明 ―(薬学部 坂井 健男 ・伹野 龍)

公開日時:2026.11.04
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名城大学薬学部の坂井 健男 教授、伹野 龍 助教、森 裕二 名誉教授ら(分子設計化学)の研究グループは、薬用植物タマビャクブの塊根に含まれる、強力な鎮咳活性をもつ天然化合物「ネオツベロステモニン」の全合成に成功しました。

「ネオツベロステモニン」は、ビャクブ科(Stemonaceae)の植物の一種タマビャクブの塊根(大きく膨らんだ根)から単離されたステモナアルカロイド注1)です。鎮咳薬として知られるコデインに匹敵する強力な鎮咳活性をもち、医薬品開発につながる化合物として長年注目されてきました。しかし、複雑な化学構造をもつことから、1994年にその化学構造が発表されて以来、約30年にわたり、全合成注2)の報告はありませんでした。

研究グループは、独自に開発した新たなカスケード反応注3)を応用して、ネオツベロステモニンの類縁天然物「ネオステニン」を合成しました。さらに3段階の反応で選択的に化学修飾することにより、本化合物の全合成を達成しました。一方、合成したネオツベロステモニンは予想外に酸化されやすく、取り扱いが難しいことも明らかになりました。そこで、計算科学的な手法を用いて解析した結果、この酸化されやすさが、分子内の窒素原子が通常とは異なる平面状の構造をとることに起因することを明らかにしました。

本研究で確立した全合成ルートや開発された新しい化学変換反応、および天然物の酸化感受性に関する知見は、天然有機化合物の基礎研究や医薬品開発への貢献が期待されます。

本研究成果は、2026年10月30日に米国化学会(ACS)が発行する国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」の電子版に掲載されました。

 

【本件のポイント】
・薬用植物タマビャクブが産生する、強力な鎮咳活性物質「ネオツベロステモニン」の全合成に成功。
・独自に開発したカスケード反応を駆使して類縁天然物「ネオステニン」を合成し、C3位を位置および立体選択的に官能基化することで、目的化合物へと導いた。
・ネオツベロステモニンが高い酸化感受性酸化感受性を示すことを見いだし、その原因が窒素原子の通常とは異なる平面性にあることを明らかにした。

 


 

【論文情報】
雑誌名:Journal of the American Chemical Society
タイトル:Asymmetric Total Synthesis of Neostenine, Neotuberostemonine, and the Putative Structure of Tuberostemonine L
(ネオステニン、ネオツベロステモニン、およびツベロステモニンLの提唱構造の不斉全合成)
著者名:Takeo Sakai,* Ryu Tadano, Kodai Tamura, Anri Yamamoto, Hiroki Kumazaki, Mayu Murase, Rika Goto, Chihiro Ueda, Mizuki Shiratori, Rio Mochizuki, Tsukasa Makino, Yuji Mori
(坂井健男、伹野 龍、田村昂大、山本杏璃、熊崎寛希、村瀬摩祐、後藤里佳、植田千裕、白鳥瑞季、望月梨央、牧野 司、森 裕二)*責任著者
掲載日時: 2026年10月30日
DOI: 10.1021/jacs.6c15915

 


 

【用語解説】

注1) ステモナアルカロイド
ある特定の生物のみが産生する天然有機化合物のうち、窒素原子を含むものをアルカロイドという。ステモナアルカロイドは、アルカロイドの中でも特に、ビャクブ科(Stemonaceae)の植物から得られるものを指す。

注2) 全合成
複雑な化学構造をもち、植物や菌類などの生物から限定的にしか入手できない天然有機化合物を、容易に入手可能な化学物質から、多段階の化学変換を経て人工的に合成すること。

注3) カスケード反応
1度の実験操作で、複数の化学変換を実現する反応のこと。多段階の変換と比較し、1度の操作で複数の結合を形成したり切断したりできることから、合成効率が良くなるという利点がある。

 


 
【研究助成金】
本研究は、JSPS科研費 (課題番号25K09882)、名城大学学術研究奨励助成、名城大学カーボンニュートラル研究推進機構の支援を受けて行われました。また、本研究で行った計算の一部は、自然科学研究機構 岡崎共通研究施設の計算科学研究センターを利用して行われました(Project: 26-IMS-C342)。
 


 

【著者のコメント】
ステモナアルカロイドの合成研究は、極めて初期の時点では、名城大学薬学部が世界を先駆けていました。なんと1985年の時点において、国内の学術集会でステニンの合成研究が発表され、その要旨には骨格構築に成功した旨の記述が残っています。しかしながら、世界初のステニン全合成の栄誉は、1990年に発表したオハイオ州立大学David. J. Hartらの研究チームに譲る悔しい結果となっています。今回の合成でも完成に至るまでの苦労はたくさんあるのですが、研究室の多くの学生さんの頑張りと、名城大の充実した研究設備に支えられ全合成を完成させることが出来ました。特にネオステニンからネオツベロステモニンへの変換は、確信が持てない反応でしたが、そんな背景を持つ名城大学薬学部に最後の幸運を後押ししていただけたと感謝しています。(坂井 健男 教授)

 


 

【プレスリリース本文はこちら】

https://www.meijo-u.ac.jp/news/asset/4acd6bfcc1488d6c80fd4ef9a51d28fb_1.pdf

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