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ナノの世界で起こっていることを解明したい
丸山隆浩(理工学部・応用化学科・教授)
- 公開日時:2022.10.25
- カテゴリ: カーボンナノチューブ 触媒 EXAFS CVD XAFS オペランド測定
研究情報
期間 |
2019~2022年度 |
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種目 |
基盤研究(B) |
課題/領域番号 |
19H02563 |
課題名 |
オペランドEXAFS測定によるカーボンナノチューブ生成メカニズムの解明 |
取材日 | 2022-04-18 |
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私立大学研究ブランディング事業にも採択されたナノマテリアル研究センター長の理工学部・応用化学科の丸山隆浩教授にお話を聞きました。
カーボンナノチューブができる過程は謎がいっぱい
科研費の研究内容を教えてください
カーボンナノチューブは直径がたった1 nm(ナノメートル)ほどのとても小さな物質で、現在少しずつ実用化が進みつつあります。カーボンナノチューブは、半導体にも金属にもなる便利な物質で、金属であれば配線など、半導体であればトランジスタなどになります。ただ、一言でカーボンナノチューブと言っても、色々な構造があるので、普通に作ると金属も半導体も混ざった状態でできてしまうんです。カーボンナノチューブを作るには、数nm(ナノメートル)のサイズの触媒(化学反応の前後でそれ自身は変化しないが、反応の速度を変化させる物質)となる金属粒子と原料ガスを700~800℃の温度で反応させます。ただ、その過程における細かいところはほとんど分かっていません。なので、半導体と金属が混ざってしまう原因やそれぞれの作り分けが可能になるヒントを見つけたいなと思い、カーボンナノチューブができる過程を詳しく調べようとしています。
触媒粒子はnm(ナノメートル)という非常に小さいサイズなので、普通に目に見えるサイズの粒子とは性質が違ってきてしまうんです。カーボンナノチューブは、触媒粒子から生えてきてそのまま伸びていくような形になるんですが、そのときの触媒粒子の状態があまり分かっていないんです。触媒となる金属が結晶になっているのかいないのか、炭素原子が触媒に含まれているのかいないのか、基本的なところから調べていこうというのがこの科研費におけるテーマですね。
研究の進み具合としては、実験方法はある程度確立することができたので、今は触媒の金属を変えることで、もう少し効率良く大量にカーボンナノチューブを作れないかを調べているところです。実験が終わればすべて終わりではなく、データ解析して論文を書く必要があります。そこまで終わらせるのは少し大変ですが、やり遂げようと思っています。
コロナ禍で研究に遅れは生じましたか
この研究は、X線吸収分光法という実験をする必要があるんですが、X線のエネルギーを変えながら測定しないといけないので、学内では出来ず、日本に10箇所ほどしかない放射光施設に行く必要があります。幸い、ここから車で1時間ほどのところにその施設があるので、1,2ヶ月に一度行っているんですが、コロナ禍が始まったばかりの頃は出張が禁止されてしまって、実験自体できなくなってしまいましたね。また、実験には試料だけでなく装置も持参する必要があるんですが、それが車2台分くらいになるんです。そのため、学生の同行が必須なのですが、学生の入構が禁止されたり、出張ができなかったりも響きましたね。その後、許可をもらえば行けるようになりましたが、施設の使用申請が2ヶ月に1度しかできないので、万が一何かあって設定した日に実験ができなくなると、単純に2ヶ月の遅れが生じてしまうので、コロナ禍ではそれが怖いところではあります。
研究の道に進まれるきっかけはありましたか
実は、大学に入る前から研究者になりたいと思っていました。大学の時は化学を専攻していたので、少し違う分野の研究室にいて、カーボンナノチューブの研究をするようになったのは、名城大学に来てからですね。今までは分析が中心で、合成はあまりやったことがなかったのですが、カーボンナノチューブは比較的単純な物質なので、合成も分析もできそうだと思ったことと、ナノ材料に興味があったことがきっかけです。また、10数年前は今ほど研究が進んだ分野ではなかったので面白そうだと思ったのも大きいですね。あまり人がやっていないことをやりたいという気持ちが強いです。その方が競争相手も少ないですしね。本当は人がいっぱいいた方がにぎやかで研究費も取りやすいのかもしれませんが。
科研費は産業応用研究であることが必須ではないので、そういった面でも自分には合っていると思っています。
少しでも謎を解明して爪痕を残したい
科研費の申請についてはどう思われていますか
もはや義務のような感じですかね。やはり実験にはどうしてもお金がかかるので。でも、今回の科研費が採択される前は3年程不採択でした。残念な気持ちはありましたが、採択率が30%くらいなので、仕方ないなと思っていました。
審査員は2年ごとに交替するので、評価は変わることがあると思います。なので、たとえ不採択だったとしても、内容を完全に変える必要はないかもしれません。もちろん分かりやすく書き直したりするなど、ブラッシュアップは必要だと思いますけどね。
基盤研究(B)が採択されたのは今回が初めてですが、基盤研究(C)の方が採択される確率が上がるので、どの種目に応募するかは考えるところではありますね。まず、何をやりたいかを考えて、費用面と併せて考えます。あとは、自分がおもしろくて意義があると思うかも大事ですね。
社会実装や社会貢献についてのお考えはありますか
そうですね。社会に使えそうな研究というより、どちらかと言うと基礎的な研究をしているので、その過程で面白いことが見つかって、社会で使ってもらえたらいいとは思っています。そのためには、面白いことを見つけないといけませんが。
研究は、自分の興味の部分が大きいですし、これをやったら何かの役に立つというよりは、大学という教育機関にいることもあって、わりとベーシックで分かっていないところを解明したら後々残るんじゃないかと思っています。ナノ材料については、最近はわりと一般的になってはきたものの、まだまだ分かっていないところがたくさんあるので、そのうちの一部だけでも解明して爪痕を残したいという気持ちがあります。
科研費の研究以外にもカーボンナノチューブの研究をしていて、触媒の種類を変えることで特定のカーボンナノチューブができないかというようなことをしているのですが、そっちもうまく行けば面白いことができるかもしれませんね。
関連リンク
- researchmap
https://researchmap.jp/read_maruyama - 科学研究費助成事業データベース
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H02563/ - 名城大学理工学部応用化学科 丸山 研究室
http://wwwro.meijo-u.ac.jp/labs/maruyama/index.html