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- <イベントレポート>令和6年度 T-GEx 研究成果エキシビションが開催されました(農学部・近澤未歩/情報工学部・野崎佑典/農学部・黒川裕介)
T-GExについて
T-GEx(世界的課題を解決する知の「開拓者」育成事業:Tokai Pathways to Global Excellence)は、名古屋大学を代表機関、岐阜大学を共同実施機関として、若手研究者が大型の国際的・学際的研究プロジェクトを牽引するPIや、産学連携や起業を国内外で活発に展開する高度人材など、自らの定める方向で成長していくことを支援し、これにより、次世代に対する「ロール・モデル」を輩出して、人材育成の好循環を作り出していくことに主眼を置いたプログラムを運営しています。
2024年度は各機関の若手研究者がT-GExフェローとして18名、T-GExアソシエートとして11名参加し、企業アソシエートも5名が参加しています。連携学術機関である名城大学は、2022年度から近澤未歩助教(農学部・応用生物化学科)、2023年度から野崎佑典助教(情報工学部・情報工学科)、2024年度から黒川裕介助教(農学部・生物資源学科)がT-GExアソシエートとして参加しています。
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令和6年度 T-GEx 研究成果エキシビション ー AI時代の教育と研究 ー
2024年12月2日(月)に名古屋大学東山キャンパスにて、『令和6年度 T-GEx 研究成果エキシビション ー AI時代の教育と研究 ー』が開催されました。本学からはT-GExアソシエートである近澤助教、野崎助教、黒川助教が参加しました。
令和6年度 T-GEx 研究成果エキシビション ー AI時代の教育と研究 ー
https://www.t-gex.nagoya-u.ac.jp/3309-2/
研究成果エキシビションは、T-GExフェロー・アソシエート・企業アソシエートが推進している先端研究に関して、これまでの研究成果および成果物を発表し、幅広い参加者(異なる専門分野の研究者あるいは研究者以外も含む)から研究の意義を理解・共感を得るとともに、今後の発展に向けたアドバイスを得ることを目的としています。
開会のあいさつ
はじめに、名古屋大学の山中宏二副総長から開会のあいさつがありました。山中副総長は「3回目となるエキシビションにおいても、活発な意見交換の場になることを大いに期待している。T-GExは、今回のエキシビションをはじめ、すべてのイベントでフェローとアソシエートが幹事となって運営を担っている。これは彼らのマネージメント力を養う貴重な機会になっていることをお伝えしたい」と話しました。
特別講演「AIと共に生きる時代における教育と研究へのAI活用」 藤吉 弘亘(中部大学・教授)
今回の開催テーマは「AI時代の教育と研究」です。現在、我々はAI(人工知能)による研究と教育の大きな変革期の中にいます。AIが社会において果たす役割は、今後さらに拡大することでしょう。さらにこれまで大学が中心となって果たしてきた研究と教育という役割は、複雑で多様化する現代社会においては、もはや大学だけに留まるものではありません。新たな価値を創造するため、我々はAIと必然的に向き合う必要があります。そうした背景からこの特別講演が企画されました。
藤吉教授は「ディープラーニングによるロボットの知能化が進み、第3次AIブームが到来した。そこから盛り下がることなく第4次AIブームに突入している。大量かつ広範なデータを学習した大規模基盤モデルを活用した生成AIの時代になっている。これによって、今まではある特定の検査などに使用されることが主だったAIが、一般の人も恩恵を受けられる存在になってきている。自動運転の分野にもブレイクスルーをもたらした」と話し、アメリカで実際に自動運転のタクシーに乗った動画を見せました。「道路状況がリアルタイムでモニターに投影されることもあり、実際乗ってみると非常に安心感があった。自分だけがいる空間が自動で移動するという点で、ただのタクシーの延長ではない新しいモビリティとしての活用の道があると感じた」と話しました。
ほかにも「Microsoft365に搭載されているCopilotは、今まで通りにワードやパワーポイントを使っているだけでAIが自動でサポートしてくれる。『この文章をそのままプレゼンテーション用にスライド10枚にまとめて欲しい』というような指示もできる。これまでと大きく変わった点は、AI自体がインフラ化してきていること、そして誰もがAIを使う時代に突入したということ」と第4次AIブームの特徴について話しました。
続いて、藤吉教授は言語モデルの構築や学習方法、チャットGPTが苦手なタスクなどについて話しました。教育への生成AIの活用法として『藤吉AI先生』も登場しました。チャットGPTが時事問題や計算問題が苦手である理由など、専門外の人にも非常に分かりやすい説明がありました。
最後に「生成AIは定型業務の効率化や議事録の要約、クリエイティブな提案の補助、特にアイデアの壁打ちには非常に有効である。半面、正確ではない情報の学習などが原因で、AIがもっともらしいウソをつく『ハルシエーション』への対策が急務である。ソース元までたどれるような仕組みを整備するとともに、AIの仕組みを知り、生成物の内容を盲信せず、必ず根拠や裏付けを自ら確認する力が必要」と藤吉教授は話し、講演を締めくくりました。
その後の質疑応答では「チャットGPTを利用することでアイデアが流出するのでは?」や「AIの台頭によって、なくなる仕事は想像できるが、新しい仕事は生まれると思うか?」などの質問が飛んでいました。
ショートプレゼンテーション
フェローとアソシエートが、1人あたり1分間でポスター発表の概要を英語で紹介しました。参加者からの投票で、最も優れたショートプレゼンテーションは表彰されることもあり、発表する側も聴く側も真剣に臨んでいました。1分間の発表を聴いただけで、本当に多様な分野の研究者の集まりであることを強く感じさせるものでした。また、1分という短い時間の発表は、余計にもっと詳しく聞いてみたいと思わせられ、続くポスター発表へのうまい導入にもなっていました。
ポスター発表
会場を移して行われたポスター発表は、昨年度よりも大幅に増えた31名で前半と後半に分かれて実施されました。このポスター発表の使用言語は、ショートプレゼンテーションと同様に英語です。本学からの発表題目は以下の通りでした。
Miho CHIKAZAWA “The effect of diet on the prevention of lifestyle diseases via the intestinal immune system”
Yusuke NOZAKI “Security Evaluation of Side – Channel Analysis using AI Technologies for Cryptographic Hardware”
Yusuke KUROKAWA “Leaf gas flims in rice are conferred by wax synthesis gene (LGF1)”でした。
ポスターのみならず、VRゴーグルなどの展示品があり、次から次へと参加者が体験していました。参加者も発表者もコーヒーを片手に終始和やかな雰囲気で、オンサイトならではの議論や交流を楽しんでいました。2時間弱の間、賑わいは一度も途切れることはありませんでした。このポスター発表においても投票によって優秀発表者が選ばれました。甲乙つけがたい内容であったため、複数の優秀発表者が選ばれていました。
最後に
締めくくりとして『JST 世界で活躍できる研究者育成プログラム総合支援事業』のプログラム・ディレクターである、安浦寛人氏が全体に対する感想を述べました。安浦氏は、まずフェローとアソシエートに向けて「発表者の研究分野が非常に多様であったため、分野外の人には難しい専門用語を多く見受けたように思う。今後は一般の人に向けて話す機会も増えると思うので、聞き手の立場を考えながら、発表を工夫することを心がけて欲しい」とアドバイスしました。
また、安浦氏は「この事業は全国5つの拠点で実施しているが、それぞれの拠点で顕著な特徴がある。当拠点の特徴はなんと言っても『ダイバーシティ』だ。東海国立大学機構の名古屋大学・岐阜大学に留まらず、東海地区のさまざまな大学や企業を巻き込んで実施されており、企業アソシエートが外にも目を向けて、大学との連携のメリットを語り、若い研究者目線で産学連携を進めているのは非常に大きな特徴だ」と話しました。
続けて、T-GExの特徴として「人文社会系の発表が他の4拠点よりも圧倒的に多いことが言える。人文社会系の研究者が、ITやさまざまな技術を使って学際的な新しい分野を切り開いていっていると思う。こういった人材の育成に投資がなされているT-GExは日本全体へのメッセージになりうると強く感じた。このエキシビションのような機会に、さまざまな方々と意見交換し、メンバー同士でも連携を進め、日本の若手研究者育成の仕組みを作り上げていく。それを全国の大学に普及していくことを目指したトライアルなので、T-GEx事業は自身のためのみならず、日本全体、しいては人類全体のためであり、その先頭をみなさんが走っているという誇りを持ってもらいたい」と激励しました。
最後のあいさつに立ったプログラムマネージャーの武田宏子名古屋大学教授は「T-GExは、フェローとアソシエートが自ら企画・運営を担い、イベントを作り上げている。自ら作り上げられることを楽しんでいるメンバーもいるようで、彼らにまずお礼が言いたい。このエキシビションは、研究発表の場を作ることが第一の目的ではあるが、発表だけではなく展示をしたり、参加者と触れ合ったりということを大事にするため『エキシビション』と命名した。来年も開催するので、フェローやアソシエートとたくさん議論してほしい」と話し、『令和6年度 T-GEx 研究成果エキシビション』を締めくくりました。