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- <開催レポート>名城大学×東北大学 連携セミナー「能登半島地震から10ヶ月 震災から何を学び どう備えるか」を開催(2024/11/12)
名城大学自然災害リスク軽減研究センター(NDRR)と名城大学理工学部は、公益財団法人 日比科学技術振興財団と共催で、名城大学×東北大学 連携セミナー「能登半島地震から10ヶ月 震災から何を学び どう備えるか」を2024年11月12日(火)に名城大学天白キャンパスで開催しました。
本学は2019年に東北大学と包括連携協定を締結し、東北大学災害科学国際研究所と本学自然災害リスク軽減研究センター(NDRR)との間で防災・減災に関する研究を推進しています。今回の連携セミナーは、東日本大震災の復興支援に中心的に携わってきた東北大学災害科学国際研究所の研究者を迎えて、今後の震災にどう備えるかについて考えるためにNDRRが主催し、理工学部第449回理工談話会としても開催しました。
学外の技術者や学生、企業関係者ら約90人が参加した当セミナーは、NDRRセンター長の小高猛司教授(理工学部・社会基盤デザイン工学科)が開会あいさつをした後、第1セッションが開始されました。
「津波堆積学が明らかにする古地震の履歴」 東北大学 災害科学国際研究所 菅原 大助 准教授
菅原准教授は、なぜ古地震の履歴を調べるのかということから話し始めました。地震予知や長期予測のために行っているものの、元日に大地震が発生した能登半島は、30年以内に強い揺れに見舞われる確率は高くないと予測されていたとし、地震の予知や予測は非常に困難であることを再認識させられたと話しました。続いて、履歴の調査方法や各地の津波堆積物、津波堆積学、履歴研究の事例などについて、東北大学の取り組みを交えて紹介しました。最後に「震災から何を学びどう備えるか」として、あらゆる史料や記録による履歴を充実し確度を向上することによって、数百年~数千年の時間間隔で発生する地震・津波を理解し、『想定外』を招かないための取り組みにつなげたいと話しました。
「建物に要求される耐震性能の変化:世界的潮流」 名城大学 理工学部 市之瀬 敏勝 特任教授(NDRR)
市之瀬特任教授は、まず、能登地震でも多くの被害が出た建物の倒壊について話しました。「強度型の耐震補強が施された建物は能登半島でも問題はなかったが、建物の基礎を補強することは実質無理に等しい。日本は密集家屋が多いため、地震火災も深刻になる。旧耐震の建物は非常に危険だが、高知県以外は耐震補強がいまいち進んでいない。これは海外においても同様で、特に、伝統的な建物の耐震補強は非常に難しい。多くの日本人が犠牲となったニュージーランドのクライストチャーチで発生した地震による建物の倒壊を見ても顕著である」と、市之瀬特任教授は倒壊した建物の写真を見せながら話しました。最後に「現行の日本の耐震基準は他国に比べて厳しいが、日本も海外も古い建物の耐震補強が必要である。基礎構造は未解明な問題も多いが、今後は国内外問わず、大地震の建物の変形を抑える構造設計に進んでいくと思われる」と話しました。
「文化遺産防災マップの構築と活用 ー能登半島地震における文化遺産の被災推定ー」 東北大学 災害科学国際研究所 蝦名 裕一 准教授
『文化遺産防災マップ』とは、指定文化財や歴史資料などの位置情報をオンラインマップ上に表示し、災害発生時に各種災害情報を重ね合わせて、文化遺産のレスキュー活動に資するマップです。蝦名准教授は「2011年3月11日に発生した東日本大震災の際に、被災地の歴史資料救出が困難を極めたことと、被災文化遺産のダメージを軽減するためには迅速な始動が必要だと考えたことで、文化遺産防災マップの着想を得た」と話しました。当初は、GoogleマップやGoogle Earthを使って、蝦名准教授が個人的に開発を始めた『文化遺産防災マップ』は、文部科学省『災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画』に2度採択され、全国の文化財情報の収集を進めながら、プラットフォームをeコミマップに変更して開発が進みました。蝦名准教授は「周知が不十分であったり、使用方法が不明であったりして、能登半島地震では同マップの活用が十分でなかったことを踏まえて、災害『前』の文化遺産防災の体制づくりを目指したい。未指定文化遺産のデータ収集や防災訓練の実施を通して、自治体や史料ネットと連携し、広域連携体制を構築していきたい」と今後の展望を話しました。
10分の休憩を挟んだ後、第2セッションが開始されました。
「能登半島地震における自治体応援職員の実態と課題」 名城大学 都市情報学部 柄谷 友香 教授(NDRR)
柄谷教授が所属する地域安全学会は、能登半島地震の発生を受けて『2024年能登半島地震特別委員会』を設置しました。この委員会は、被災地へ派遣された自治体の応援職員から、その体験や思いをくみ取ることで、被災地の状況と応援の実態を明らかにし、その内容を記録・分析して、今後の災害対応に資する提言を行うことを目的としています。実際に被災地の応援から戻った自治体職員39名・19機関を対象にインタビュー調査を行いました。その結果から、『応援対策職員派遣制度の仕組みやミッションを理解しているのか』『応援派遣支援は支援自治体の災害対応力につながるのか』など、応援派遣支援の強化に向けて議論すべき視点が多数見えてきました。最後に柄谷教授は「新たな調査・検討項目を追加し、『2024年能登半島地震特別員会 第2期』を開始した。成果報告会の開催や災害対応に資する提言を目指して進めている」と話しました。
「能登半島地震の支援交通の変化:モバイル空間統計データから」 東北大学 災害科学国際研究所 奥村 誠 教授
1995年の阪神淡路大震災に始まり、遠隔地からのボランティアの活躍は目覚ましいものがあります。しかし、能登半島地震では、貧弱な道路網が寸断されてしまったために移動が困難となり、外部ボランティアの積極的な受け入れができずに、能登半島は『静かすぎる被災地』と呼ばれました。奥村教授は「現地調査をせずにリアルタイムに近い状況を把握するためにはどうすればよいか」と考え、時間帯別人口分布データである『モバイル空間統計』を利用することを考えつきました。この統計は、GPSデータ等に比べてサンプル数が多く、流量や密度といった値を通した定量的な把握に適しているので、人口分布データの時間変化から人々の移動の実態を把握することが可能です。「能登半島地震被災6市町における被災地外居住者を対象として、約10ヶ月間のデータを分析し、能登半島地震への被災地外居住者の支援交通の把握を試みた。今後は道路の復旧状況との照合が必要ではないかと考えている」と奥村教授は話しました。
「地震と豪雨:能登半島災害における河川堤防の災害復旧事業の現状と課題」 名城大学 理工学部 李 圭太 特任教授(NDRR)/日本工営(株)執行役員
能登半島は元旦の地震に引き続き、9月に記録的な豪雨に見舞われ、大きな打撃を受けました。李特任教授は、公開されている情報をもとに、能登半島地震の被害状況や復旧・作業状況を説明した後、同様に奥能登豪雨の被害状況や災害状況を説明しました。続いて、多くの被災した堤防の震災前・震災後・応急復旧後・豪雨災害後などの記録写真を示して、現地での調査結果を報告しました。地震と豪雨の複合災害に対する復旧事業の難しさや葛藤を、現場の最前線に立つ技術者として語りました。
それぞれの講演者の発表後には、時間の許す限り会場から質問があがり、活発な意見が交わされました。
最後に、東北大学 災害科学国際研究所の森口周二准教授が閉会の言葉を述べ、セミナーは終了しました。
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