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<開催レポート>カーボンニュートラル研究推進機構 第6回研究交流会を開催(2024/10/31)

公開日時:2024.11.18
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名城大学カーボンニュートラル研究推進機構は、コアメンバーによる第6回研究交流会を2024年10月31日(木)に対面で開催しました。当日はコアメンバーを中心に13名が参加しました。

 

コアメンバーは、当機構の3つの研究グループ「政策」「環境」「新素材」のいずれかに属している本学の研究者で構成され、その研究分野は多岐に渡っています。この研究交流会は、研究分野や学部の垣根を越えてコアメンバー間の相互理解を深め、メンバー同士の交流の促進を図ることを目的に昨年2022年度から開催されており、今回で6回目を迎えました。

 

はじめに、大野栄治機構長(副学長・都市情報学部・都市情報学科・教授)が「当機構のコアメンバーは64名に達している。この研究交流会は、強制力を持たない緩やかな集まりとして開催しているが、みなさん自主的に参加していただいており、大変うれしく思う。今日も異なる分野の研究紹介が予定されているので、活発な意見交換を期待している」と話しました。また、学内で開催される「カーボンニュートラル実現に向けたアイデアコンテスト(応募対象:本学 学部生・大学院生 附属高校生徒)」について、広く周知を依頼しました。

 

次に、自身の研究紹介を中心とした自己紹介など(1人あたり約10分間)を以下の3名が行いました。

【発表者】

<環境グループ>

益田 泰輔(理工学部・電気電子工学科・教授)

「名城大学エネルギーセンターの最適設備計画・運用に関するフィージビリティ・スタディ」

岡本 誉士典(薬学部・薬学科・准教授)

「培養肉の安全性に関するフィジビリティスタディ」

吉永 美香(理工学部・建築学科・教授)

「可変透湿シートの透湿抵抗測定方法」

 

 

「名城大学エネルギーセンターの最適設備計画・運用に関するフィージビリティ・スタディ」

益田 泰輔(理工学部・電気電子工学科・教授)

益田教授は、2024年度FS共同研究費が交付された、自身が研究代表を務めるFS研究の目的や進捗状況について報告しました。「『名城大学のカーボンニュートラル基本方針』のうち『カーボンニュートラルに資する省エネルギー及び再生可能エネルギー利用の推進』の方向性を示したいというモチベーションを持って取り組んでいる。具体的には、①天白キャンパスのエネルギー設備・フローの調査、②既設設備の最適経済・環境運用、③将来の設備計画・設備運用、を進めており、現在得た情報から、最適電力設備計画の試算と現状の電気代(試算)との比較などを行っている。今後も本学の関係部署と協力しながら進めていきたい」と話しました。

 

参加者からは、太陽光発電パネルを設置する場所のアイデアや、現在注目されている「ヘロブスカイト太陽電池」についての情報提供があり、それを受けて益田教授は「太陽光発電パネルは、必ずしもキャンパス内に設置しなくてよいので、アイデアはたくさんあると思う。今後、いろいろな条件で試算してみたい」と話しました。

 

「培養肉の安全性に関するフィジビリティスタディ」

岡本 誉士典(薬学部・薬学科・准教授)

岡本准教授も、同じく2024年度FS共同研究費が交付された、自身が研究代表を務めるFS研究の目的や進捗状況について報告しました。「自らの専門である薬学とカーボンニュートラルをどう結び付けられるかを考えた。普段『衛生化学』という、薬学のなかでも病気の治療ではなく、どうすれば病気にならないかを研究しているので、食経験のない物質(培養肉)に、ヒトに悪影響を与える成分が含まれていないかという視点で研究することにした。畜産、特に肉牛の生産は、生育環境の整備や牛のげっぷに含まれるメタンガスなど、環境負荷が大きいことがよく知られている。培養肉は細胞を増殖させて肉の状態にするので、屠殺の必要がなく、来るべき人口増加にも対応が可能と言われている。ただ、細胞を培養する過程で微生物や化学物質による汚染の懸念があるため、農薬の残留物質検査のノウハウを生かして、網羅的に測定することを目指している。食経験がない物質なので、今後どんな新たな問題点が出てくるかは課題である」と話しました。最後にコアメンバーに対して「培養細胞を手に入れるためには、屠殺して1時間以内の牛肉を手に入れる必要があるが、現状入手方法がないため、ぜひ相談に乗ってほしい」と呼びかけました。

 

参加者の「肉と言ってもいろいろな肉があると思うが、やはり牛肉がよいのだろうか。入手の困難さの話があったが、鶏肉や魚なら簡単に手に入りそうでは?」というコメントに対して、岡本准教授は「環境負荷という点に注目して、まずは牛肉でと考えているが、魚は未経験なので少し難しいとしても、確かに名古屋には名古屋コーチンがあるので、考えてみてもよいかもしれない」と答えました。また「共同研究者である農学部の林利哉教授と今後どのようなコラボを考えているか」という質問に対しては、「農学部では製品に近い知識がたくさん蓄積されていると思うので、我々の基礎的な知見を現場にどのように落とし込めるかというところからディスカッションしていきたい」と答えました。

 

「可変透湿シートの透湿抵抗測定方法」

吉永 美香(理工学部・建築学科・教授)

吉永教授は「2022年11月に開催した第1回研究交流会で研究紹介をしたが、その際に自分の知りたいこと・困りごとを2つほどお話した。そのうち1つはなんと先日の第5回研究交流会で、専門の方に出会うことができた。今日はもう1つの未解決の問題について、改めてお話したい。特に化学系に強い先生にご相談できたらありがたい」と話し始めました。「1970年代に家屋の壁に断熱材が入り始め、室内からの湿気による冬型結露が発生するようになった。そのため、湿気を通さない『ポリエチレンフィルム』を室内側に貼って、冬型結露を防止していたが、1980年代に温暖化や室内の冷房によって、外気からの湿気による夏型結露も発生するようになった。そこで、夏と冬で湿気抵抗が変わる素材である『可変透湿シート』が、『ポリエチレンフィルム』に代わって使用されるようになった。『可変透湿シート』は、分子構造の変化により、湿気が少ない時は湿気を通さず、湿気が多い時は湿気を通す素材。相対温度に応じた透湿抵抗の変化を、精密な機器を使用して正確に測定することにトライしてみたところ、条件によって透湿抵抗値が大幅に変化してしまうことに気づいた。その原因が分からず困っているので力を貸して欲しい」と吉永教授は話しました。

 

発表後、薬学部の研究者を中心に、実験の条件や方法を確認しつつ、さまざまな意見を述べて原因の検討を行っていました。検討は時間内に収まらず、研究交流会終了後もしばらく続いていました。

 

 

最後に、小高猛司副機構長(総合研究所長・理工学部・社会基盤デザイン工学科・教授)が「今日は非常に実りのあるディスカッションがたくさん交わされていて、とても楽しかった。吉永教授の発表を聞いて、この機構はこういう使い方もあるんだなと感じられたと思う。これからもコアメンバーのみなさんが、いろいろな困りごとを持ち込んで、解決に向かえるような場になればよいと思う。このような手作り感のある学際連携の仕組みは、本学では唯一だと思うので、今後も『カーボンニュートラル』をキーワードに研究者みんなで進めていきたい。3月の次回研究交流会は、少し特別な内容になる予定だが、ぜひ参加して欲しい」と話し、閉会しました。

 

第7回研究交流会は、来年3月初旬に特別バージョンでの開催を予定しています。

 

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