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<開催レポート>カーボンニュートラル研究推進セミナー「光反応を利用するヒトと環境に優しい有機合成を目指して」(2023/12/15)

公開日時:2023.12.23
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農学部 天然物有機化学研究室は、2023年12月15日(金)に名城大学天白キャンパスにて、カーボンニュートラル研究推進セミナーを開催しました。当日は農学部や薬学部の学生を中心に約40名が参加しました。

 

セミナーでは、岐阜薬科大学の伊藤彰近教授が「光反応を利用するヒトと環境に優しい有機合成を目指して」をテーマに講演を行いました。

 

はじめに、農学部・応用生物化学科の松儀真人教授から、伊藤教授の略歴紹介がありました。伊藤教授は、岐阜薬科大学卒業後、京都大学薬学部修士課程・博士課程を経て、1988年から岐阜薬科大学で教鞭を取られています。

 

伊藤教授からは、光反応を使って取り組んださまざまな有機合成について、スライドを使いながら説明がありました。伊藤教授は「光を利用することで、これまで複雑な試薬やドラスティックな条件を必要としていた反応を、もっと簡単に行えるようにすることを目指した」と述べ、続いて具体的に、医薬品等の母核として頻出のキナゾリン、キナゾリノンなどの合成、およびさまざまな脱水素型クロスカップリング反応について、光照射による詳細な検討結果の説明がありました。

 

また、テーマにある通り、環境だけでなく、「ヒト」により優しくするために、人の手をわずらわせずに光反応のフルオートメーション化に取り組んでいると説明しました。「ロボットは長時間の単純な繰り返し作業は得意。ただ、現段階では、突発的な出来事への対処が難しい。その点では、人間にはまだまだかなわないなと思う」と述べました。

 

 

講演の最後には、岐阜薬科大学の詳しい紹介に加えて、岐阜県の花火大会や鵜飼いなどの紹介があり、岐阜来訪への興味が大いにそそられる内容でした。

 

続く質疑応答では、参加した学生からたくさんの質問があがっていました。いくつかご紹介します。

 

「光反応の実験を全自動化するというのは夢のような話だったが、コスト面が気になった。初期費用を含めたコストはどの程度かかるのだろうか」という質問には、「ロボットそのものだけだと120万円ほどだったが、ライセンス料や反応後のフロー処理装置なども含めるとかなりの金額になる。ただ、人力を使う場合にも人件費が必要になるし、長期的な目で見れば、過度な投資にはならないと考えている。また、現実味を帯びてきている少子化に伴う人手不足にも対応可能だろう」と伊藤教授は答えました。

 

同じくロボットに関する質問として「ロボットのミスや安全面での心配はないか」と問われ、「ロボットは設定したことはきっちりやってくれる。しかし、全体のプロセスに支障がなくても、ちょっと位置がズレただけで止まってしまう。融通が全然利かない。今回使用した協働ロボットは、暴走して人に危害を加えるといった心配はないが、臨機応変に対応できないことが課題だろう」と答えました。

 

また、光反応を使った有機合成については、「通常、溶媒として使用することがあまりない『酢酸エチル』を使うと、反応がうまくいったという話があったが、理由は何だと思うか」という質問がありました。伊藤教授は「酢酸エチル自体が光を吸収して反応系に関与しているか、あるいは分解して生成した酢酸が影響を及ぼしている可能性が考えられるが、まだ不明である」と述べました。

 

 

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