31994 年度創立の総合研究所が 30 周年を迎えられたこと、心よりお祝い申し上げます。創立当初、特定の部屋を占有しないために「姿なき研究所」と呼ばれ、まさにゼロからのスタートを切った総合研究所でありました。創立の翌年度には紀要が 発 刊され、これを皮切りにNEWS の刊行、研究プロジェクトの採択、公開講演会の開催などが続きました。そして、創立から 6 年後の2000 年度には学術研究助成制度が整備され、現在の総合研究所活動の原型が出来たように思います。その後、総合研究所は独自の研究助成から外部資金の獲得支援まで幅広い研究振興策を展開し、名城大学の研究発展に大きく貢献されてきました。総合研究所をここまで育て上げられた歴代の所長や関係職員の方々に対し、深甚なる感謝を申し上げます。総合研究所設立の趣旨は、地域規模から地球規模まで広範囲に亘る諸問題がますます複雑化・輻輳化する社会情勢を見据えて、個々の専門分野における研究高度化のみならず、異なる専門分野の研究連携が必要であるとの考えに基づいています。研究高度化については世界最先端・最高水準の成果を創出する研究センターがあり、異分野研究連携については学部学科内の教員による共同研究から異なる学部に所属する教員による共同研究まであり、一定の目標は達成しているようです。しかし、異分野研究連携については、まだ課題が残っているように思います。総合研究所設立当時は文理融合型教育の重要性が日本社会で広く認知されるようになった頃であり、1995 年度に新設された都市情報学部はまさに文理融合型教育を前面に出した学部です。丸勢進学長(1994 年当時)は NEWS 創刊号の冒頭の挨拶文で「文系・理系を併せもつ名城大学に専門分野を超えた研究の場として設立された総合研究所」と述べられ、文理融合型研究への期待も寄せられました。創立から 30 年を経て、総合研究副学長所を通じて知る名城大学内の共同研究はほぼ理系の異分野研究連携であり、文系・理系の研究連携はまだ開拓途上にあります。2022 年度には総合研究所の傘下にカーボンニュートラル研究推進機構が設置されました。これは菅義偉内閣総 理 大 臣(2020 年当時) が 所 信表 明 演 説に おいて2050 年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言されたことを受けた名城大学の重要な対応戦略の一つであります。ここで、カーボンニュートラルは温室効果ガスの排出削減と吸収増大により排出を実質ゼロにしようとするものですが、温暖化防止だけでなく、排出削減のための脱化石燃料はエネルギー安全保障に繋がり、吸収増大のための森林保全は災害防止に貢献し、さらに温暖化防止の機運に乗じた「日本の成長戦略」として位置付けられています。このような背景で推進されるカーボンニュートラル研究は、①新素材の開発、②各種素材を応用した新技術の開発、③新素材・新技術の社会実装に向けた新しい価値の創造、④消費者の行動変容をもたらす制度設計などが考えられます。①と②については既に理系の異分野研究連携において推進されています。③と④については文系と理系の各分野において扱われているようですが、文系・理系の研究連携はまだなされていないようです。特に③については、素晴らしい新素材を開発したにもかかわらず諸般の事情で社会に受け入れてもらえずに困っているという現状があることから、文系・理系の研究連携が期待されています。「解決のヒントは意外なところで見つかる」とよく言われますが、研究交流の薄い専門分野にもヒントが転がっている可能性があります。総合研究所が文系・理系の異分野研究交流の拠点となり、教育・研究ともに文理融合型総合大学としての名城大学に発展することを期待しています。大 野 栄 治祝・総合研究所 30 周年
元のページ ../index.html#8