3. カーボンチェーンSWCNT の伝導型はカイラリティにより決まるため、半導体型 SWCNT のみを作製するには、SWCNT の構造制御技術が必要となります。そのため、我々のグループでは、SWCNT 生成中も構造変化や凝集の生じない安定な触媒種の開拓を行っています。当初は高融点金属である白金族元素を触媒に用いた SWCNT 合成を行っていましたが、研究を進めるうち、5 種類の白金族元素から成るハイエントロピー合金(HEA)ナノ粒子が、SWCNT の構造制御に有効な触媒であることを見出しました。HEA は 5 元素以上の元素が均一に混合した合金で、高温でも構造安定な上、高い触媒活性をもつため世界的に注目されている材料です。我々は HEA ナノ粒子が SWCNT 合成においても高い活性をもち、かつ、SWCNT 生成前後で構造が変化しない安定な触媒として働くことを明らかにしました。HEA ナノ粒子を触媒に用いることで将来、半導体型 SWCNT の高効率合成の実現が期待できます。一方、SWCNT はナノサイズの金属触媒粒子と原料ガスが高温で反応することにより生成します。このとき、触媒粒子の化学状態が SWCNT の直径などの構造パラメータと直接関係することが理論的に予想されています。しかし、SWCNT 生成中は高温であるため、触媒粒子の化学状態を直接決定することは困難でした。我々のグループでは、高輝度かつエネルギー可変な光源である放射光を用いてリアルタイムでの分析を行い、SWCNT生成中の触媒 粒子の化学 状 態を明らかにする研究を行っています。放射光施設は現在国内に 10 箇所ありますが、愛知県内にあり、大学から 1 時間程度の距離にある「あいちシンクロトロン光センター」で X 線吸収分光(XAFS)測定を行い、鉄やコバルト、ニッケルなど各種の触媒金属の分析を行っています。CNT は一次元のナノ材料と呼ばれていますが、厳密には直径が数ナノメートルあります。これに対し、炭素原子が直線状に並んだカーボンチェーン(カルビンとも呼ばれる)は、原子一個分の太さしかない究極の一次元ナノ材料といえます。また、強い力で引っ張ってもほとんど変形せず、ダイヤモンドを凌駕する硬い材料として、近年注目されています。しかし、カーボンチェーンは大気中では不安定なため、CNT 内部の空洞にカーボンチェーンを内包させる試みが進められています。我々のグループでは水素末端ポリイン分子と呼ばれる非常に細い直線型の分子を前駆体に用いることで、SWCNT の内部に高い収率でカーボンチェーンを内包させることに成功しています(図 3)。特に、直径が 0.7 ~ 0.8 ナノメートルの細い SWCNT 内にも最安定構造で内包が可能なことから、今後、本材料の性質を明らかにし、応用展開につなげていきたいと考えています。36 30thAnniversary図 3 (a) カーボンチェーンと (b)SWCNT に内包されたカーボンチェーン図 2 単層カーボンナノチューブ(SWCNT)
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