念した。その後ゲームソフト開発会社のスタートアップに携わった後、何と 2009 年にユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で認知神経科学の博士号を取得するため学究生活に戻りました。2010 年に汎用学習アルゴリズムの構築に特化した機械学習のスタートアップ起業である DeepMind テクノロジーズを立ち上げました。そして 2014 年に Google 社と業務提携するとともに、2015年 DeepMind のプログラム AlphaGo が囲碁チャンピオンを打ち倒したというニュースが世界中に流れました。このニュースを覚えておられる方も多いと思います。これが現在の AI 技術の根幹をなすものでした。以上がハサビス氏の経歴です。驚くべきことに彼はコンピューターサイエンスの専門家であるとともに脳神経化学の専門家でもあるのです。典型的な学際領域での成果です。しかもハサビス氏は一人二役を演じたのです。2024 年のノーベル物理学賞を見てみましょう。「人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にした基礎的発見と発明に対する業績」によりJohn J. Hopfield 氏(プリンストン大学、アメリカ)、Geoffrey E. Hinton 氏(トロント大学、カナダ)の 2 氏が受賞しました。John J. Hopfield 氏は物理学者でありますが分子生物学者でもあります。分子生物学(molecular biology)とは、生命現象を分子を使って説明、理解することを目的とする学問です。また、Geoffrey E. Hinton 氏はコンピュータ科学および認知心理学の研究者でもあります。認知心理学(cognitive psychology)とは、注意、言語使用、記憶、知覚、問題解決、創造性、論理的思考などの精神過程に関する科学的研究です。やはりこの二人も典型的な学際領域での成果です。特に Hinton 氏の場合は心理学と11名城大学終身教授特別栄誉教授総合研究所30周年に寄せて第一篇総合研究所は、1994(平成 6)年 4 月に設立され 30周年を迎えることになりました。誠におめでとうございます。総合研究所はその設立以降、今日に至るまで、専門分野を越えた最先端かつ本学の独自性を反映した学際的共同研究の推進を大きな目的の一つとしてきました。学際(Interdisciplinary)とは、研究などがいくつかの異なる学問分野にまたがって関わることであります。学際領域の重要性は以前より言われてきたことであり、最近ではさらに進んで文理融合という言葉もよく耳にします。学際(Interdisciplinary)領域の重要性は理解できるにしても、いざ実行しようとすると多くの困難が伴います。異分野のことを理解しようとしても技術用語、専門用語が全く違うので面食らうことから始まります。また、異分野の最先端情報を得るにも相当の困難が伴います。これらを克服していかねばなりません。この学際(Interdisciplinary)領域の重要性について最近私が感じている点を述べたいと思います。それはAI 技術が生まれた背景です。2024 年のノーベル物理学賞、化学賞ともに AI 技術が選ばれました。まず、化学賞の方からお話しします。ワシントン大学のデイヴィッド・ベイカー氏と、グーグル・ディープマインド社のデミス・ハサビス氏、ジョン・ジャンパー氏の三名に授与されました。ベイカー氏は計算機を用いて天然にない新しいタンパク質をゼロから設計し、ハサビス氏とジャンパー氏はタンパク質の形を高精度で予測できるツール「アルファフォールド 2(AF 2)」を開発したことが受賞理由です。驚いたのは受賞者の一人ハサビス氏の経歴です。ロンドン生まれの彼は 1997 年からケンブリッジ大学のクイーンズ・カレッジでコンピューターサイエンスの学位取得に専吉 野 彰AI 技術は脳神経科学から生まれた
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